株主間契約とは|少数株主が確認すべき効力・拒否権・情報提供・売却条項

株主間契約とは、複数の株主が、会社運営、議決権行使、情報提供、役員指名、株式譲渡などのルールを定める契約です。株主間契約書、株主間協定、SHAと呼ばれることもあります。

少数株主にとって重要なのは、株主間契約があるという事実だけではありません。自分が現在も契約当事者・権利者なのか、会社や新株主も契約に加わっているのか、拒否権や情報請求権をどのような手続で行使できるのか、持株比率の低下や株式譲渡によって権利が消滅していないかを具体的に確認する必要があります。

また、株主間契約に反する行為があっても、会社法上の株主総会決議や取締役会決議が当然に無効になるとは限りません。契約当事者間の効力、会社・非当事者への効力、会社法上の決議の効力を分けて考えることが重要です。

この記事では、すでに株主間契約を締結している少数株主の立場から、契約の効力、定款・投資契約との違い、事前承諾事項、情報提供、取締役指名権、取締役会オブザーバー、議決権拘束契約、売却条項の確認方法を解説します。

  • 株主間契約は、原則として契約当事者間の権利義務を定めるもので、会社法上の効力とは分けて考えます。
  • 自分、会社、他の株主、新株主が契約当事者か、加入・承継・終了条項まで確認します。
  • 拒否権・情報提供権・取締役指名権は、対象事項、行使主体、持株比率、通知方法、期限を確認します。
  • 議決権拘束契約の履行を求められるかは、文言、目的、期間、承継、運用などから個別に判断されます。
  • タグアロング、ドラッグアロング、ROFR・ROFO、買取請求は、専用条項の要件と手続を確認します。

坂尾陽弁護士

株主間契約は、条項名だけで権利行使できるものではありません。「誰が、誰に、いつまでに、どの方法で求められるか」を条文と現在の株主関係に照らして確認しましょう。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年  京都大学法学部卒業
2011年  京都大学法科大学院修了
2011年  司法試験合格
2012年~ 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

弁護士 坂尾陽

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株主間契約とは

株主間契約とは、同じ会社の株主同士が、会社の運営や株式の取扱いについて合意する契約です。ベンチャー投資、共同事業、合弁会社、同族会社、共同創業など、複数の株主が継続的に会社へ関与する場面で利用されます。

会社法や定款には、株主総会、取締役、株式譲渡などの基本ルールが定められています。しかし、特定の投資家にどの資料をいつ提供するか、重要事項について誰の事前承諾を得るか、どの株主が取締役候補者を指名するか、第三者への株式売却時に他の株主が参加できるかといった個別の取り決めは、株主間契約に置かれることがあります。

少数株主側では、株主間契約を「会社を設立するときに作る書面」としてではなく、出資後に使える権利と負っている義務を確認する書面として読む必要があります。

株主間契約と投資契約・出資契約の違い

投資契約・出資契約は、株式数、払込金額、投資実行の前提条件、表明保証など、出資時の条件を中心に定めることが多い契約です。株主間契約は、出資後の会社運営、議決権行使、情報提供、役員指名、株式移動など、継続的な株主関係を中心に定めることが多い契約です。

もっとも、実務上は、1通の契約に投資契約と株主間契約の内容が混在することがあります。書面名だけで分類せず、投資実行条件や表明保証を確認するときは投資契約書・出資契約書とは|少数株主・投資家が確認すべき条項と権利も併せて確認してください。

株主間契約と定款・機関決議の違い

書面・行為 主な役割 少数株主が確認する点
株主間契約 契約当事者間の会社運営・議決権・情報・株式移動のルール 当事者、権利者、義務者、期限、終了・承継、違反時の効果
投資契約・出資契約 出資条件、株式引受、表明保証、投資実行前提 出資時の説明と実際の状況、投資後に残る権利
定款 株式会社の組織・株式・機関に関する基本ルール 種類株式、譲渡制限、機関設計、決議要件との整合
株主総会・取締役会決議 会社の機関として具体的事項を決定 招集、議案、決議内容、議事録、会社法・定款上の手続

株主間契約と定款の内容が異なる場合、「どちらが常に優先する」と単純に考えることはできません。契約当事者が株主間契約に違反したかという問題と、会社の機関決議が会社法・定款上有効かという問題は別です。

少数株主にとってのメリット・デメリット

少数株主にとってのメリットは、持株比率だけでは確保しにくい情報提供、重要事項への関与、役員指名、売却・退出の権利を契約で具体化できることです。一方、契約当事者や有効期間が限られ、会社法上の手続とは別に対応する必要がある点がデメリット・限界になります。

  • メリット:法定の持株比率にかかわらず、当事者間で必要な権利・手続を個別に定められます。
  • 柔軟性:事業・資本政策・株主構成に応じて、情報、拒否権、役員、売却条件を設計できます。
  • 限界:会社や新株主が非当事者であれば、契約上の義務を当然には及ぼせません。
  • 実行上のリスク:条項が抽象的な場合、履行請求や仮処分による実現が難しくなることがあります。
  • 管理上の負担:変更契約、加入契約、持株比率、終了事由を継続的に管理する必要があります。
MEMO

株主間契約に「事前承諾が必要」と書かれていても、その承諾を得ずに行われた会社の決議が直ちに無効になるとは限りません。契約上の責任と会社法上の決議効力を分けて検討します。


最初に契約当事者・有効期間・承継を確認する

拒否権や情報提供権の条項を読む前に、現在の自分にその契約が適用されているかを確認します。出資時には契約当事者だったとしても、契約更新、持株比率の低下、株式譲渡、組織再編などにより、権利が変わっていることがあります。

自分・会社・他の株主が契約当事者か

契約書の冒頭、当事者欄、署名欄を確認し、自分、発行会社、創業者、経営株主、他の投資家のうち、誰が契約当事者になっているかを整理します。契約本文で「投資家」「主要株主」「経営株主」などの定義が置かれている場合は、自分がどの区分に含まれるかも確認します。

会社自身が株主間契約の当事者でなければ、会社に直接義務を負わせることが難しい場合があります。他方で、会社が当事者であっても、取締役選任や株主総会決議などについて会社法上必要な手続が不要になるわけではありません。

新株主の加入契約・株式譲受人への承継があるか

株主間契約は、株式を取得しただけで新株主に当然に承継されるとは限りません。そのため、株式譲渡の条件として、譲受人が加入契約を締結することや、既存契約上の地位を承継することが定められる場合があります。

追加投資や株式譲渡があったときは、加入契約、変更契約、合意書、サイドレターを確認してください。新しい株主が加入していない場合、議決権拘束や譲渡制限の実効性が想定より弱くなっていることがあります。

期間・終了事由・持株比率要件を確認する

株主間契約には、有効期間、更新、解除、終了事由、権利消滅条件が定められることがあります。特に少数株主は、一定の持株比率を下回ると情報提供権、事前承諾権、取締役指名権などが消滅する条項に注意が必要です。

  • 有効期間・更新:契約開始日、満了日、自動更新、更新拒絶の期限を確認します。
  • 終了事由:上場、M&A、清算、特定株主の離脱、全当事者の合意などを確認します。
  • 持株比率要件:何%又は何株以上を保有すれば権利が続くか、希薄化後も救済があるかを確認します。
  • 株式譲渡:譲渡後に旧株主の権利義務が残るか、譲受人の加入が必要かを確認します。
  • 相続・死亡・組織再編:契約上の地位や株式の承継、権利消滅、売渡しの取扱いを確認します。
  • 存続条項:契約終了後も秘密保持、損害賠償、紛争解決などが残るかを確認します。

株主間契約の効力は3つに分けて考える

株主間契約の効力を確認するときは、「契約当事者間の効力」「会社・非当事者への効力」「会社法上の決議への影響」を分けると整理しやすくなります。

契約当事者間では債権的な権利義務が問題になる

有効に成立した株主間契約では、当事者間で、情報を提供する、事前承諾を得る、一定の議決権行使をする、株式を譲渡しないといった契約上の義務が問題になります。違反があれば、契約内容に応じて履行請求、差止めのための仮処分、損害賠償、解除などを検討する余地があります。

ただし、条項が抽象的で、誰が何をすべきか特定できない場合や、単なる協力方針・努力義務にとどまる場合には、具体的な履行を強制することが難しいことがあります。

会社・非当事者には当然に効力が及ぶわけではない

契約に署名していない会社、他の株主、株式譲受人などに、株主間契約上の義務が当然に及ぶわけではありません。会社に情報提供義務や取締役会オブザーバー受入義務を負わせたい場合は、会社自身が当事者か、別の合意があるかを確認します。

また、非当事者である新株主を拘束する必要がある場合は、株式譲渡前の加入義務、加入契約の締結、譲渡承認との連動などが定められているかを確認します。

契約違反と会社法上の決議効力は別に検討する

株主が契約に反して議決権を行使した場合、その株主が契約上の責任を負う可能性があります。しかし、株主総会決議や取締役会決議が無効・取消しになるかは、会社法、定款、決議手続、契約当事者の範囲などを踏まえた別の検討が必要です。

「株主間契約違反があるから決議は無効」「決議が成立したから契約違反も問題にならない」といういずれの単純化も避ける必要があります。

東京高裁令和2年1月22日判決から分かること

東京高裁令和2年1月22日判決は、昭和47年に3名の間で交わされた取締役選任に関する合意について、株式を承継した者らが、数十年後の株主総会で特定人を取締役に選任するよう議決権行使を求めた事案です。

裁判所は、株主間契約を一律に無効としたのではなく、契約当事者の属性、契約内容、締結の動機・目的、株式や議決権の割合、締結時期などから、当事者がどのような法的効果を生じさせる意思だったかを個別に検討しました。そのうえで、この事案では、将来にわたり議決権行使を強制できるほどの法的拘束力を付与する意思を認めませんでした。

この裁判例からは、株主間契約書という名称だけで結論を出さず、条項の具体性、契約期間、承継、当事者の属性、締結後の運用を確認する必要があることが分かります。

注意

株主間契約は「すべて無効」でも「書いてあれば必ず履行強制できる」ものでもありません。具体的な文言、当事者、目的、期間、承継、運用を確認して判断します。


事前承諾事項・拒否権を確認する

株主間契約では、会社が重要な行為をする前に、特定の投資家や株主の承諾を得ることを求める事前承諾事項が定められることがあります。少数株主にとっては、持株比率だけでは止められない重要事項に関与するための拒否権として機能する場合があります。

典型的な対象には、新株・新株予約権の発行、定款変更、合併・会社分割・事業譲渡、重要な資産の処分、多額の借入れ、関連当事者取引、重要な事業計画・予算の変更、役員の選解任、配当などがあります。

対象事項と行使主体を特定する

「重要事項は投資家の承諾を得る」とだけ書かれていても、何が重要事項か、どの投資家の承諾が必要かが不明確であれば、権利行使で争いになります。別紙、定義条項、金額基準、持株比率基準まで確認してください。

  • 対象事項:新株発行、借入れ、M&A、資産処分、役員変更など、対象が具体的に列挙されているかを確認します。
  • 承諾権者:個別株主、一定比率以上の投資家、投資家多数、特定種類株主のいずれかを確認します。
  • 義務者:会社、経営株主、各株主のうち、誰が承諾を取得する義務を負うかを確認します。
  • 通知内容:判断に必要な資料、条件、相手方、金額、実行予定日が通知対象かを確認します。
  • 回答期限:何日以内に回答するか、回答がない場合にみなし承諾となるかを確認します。
  • 例外・権利放棄:緊急時、通常業務、一定金額以下、既承認予算内などの例外を確認します。

拒否権と会社法上の決議要件を混同しない

契約上の事前承諾権は、会社法上の株主総会決議や取締役会決議とは別の仕組みです。契約上の承諾が必要でも、会社法上は別の機関決議が必要になることがあります。反対に、会社法上の決議要件を満たしていても、契約上の事前承諾を欠けば契約違反が問題になることがあります。

承諾なく重要事項が実行されそうな場合は、実行日、会議日程、通知状況を確認し、緊急対応の必要性を早めに判断します。


情報提供権・情報請求権を確認する

少数株主が会社の状況を把握するため、株主間契約に情報提供権又は情報請求権が定められることがあります。法定の株主権とは別に、月次資料、予算、事業計画、資金繰り、取締役会資料などを定期的に受け取れる場合があります。

対象資料・頻度・期限・形式を確認する

確認項目 条文で見る点 実務上の注意
対象資料 月次試算表、決算書、予算、事業計画、資金繰り、議事録等 「合理的に必要な情報」だけでは範囲が争われやすいことがあります。
頻度・期限 毎月・四半期・年度、決算後何日以内か 遅延が継続している場合は、各未提供分を時系列で整理します。
提供方法 電子データ、書面、閲覧、説明会、データルーム等 閲覧だけか写しを取得できるかで実用性が変わります。
秘密保持 利用目的、第三者開示、専門家共有、競合関係 情報請求と秘密保持義務を一体で確認します。
拒否・除外 法令、個人情報、競業、利益相反、特権情報等 拒否理由が条文に沿うか、代替開示が可能かを検討します。

請求するときは条項と未提供資料を特定する

情報提供を求めるときは、単に「経営情報をすべて開示してください」と求めるのではなく、契約条項、対象期間、資料名、提供期限、提供方法を具体的に示す方が、違反の有無を整理しやすくなります。

会社が「秘密情報だから出せない」「競合関係がある」と主張する場合は、契約上の拒否事由、秘密保持条項、マスキングや専門家限りの開示などの代替手段を検討します。

MEMO

契約上の情報提供権と会社法上の帳簿閲覧等の株主権は別の制度です。契約上の請求が難しい場合でも、別の株主権を検討できることがありますが、それぞれ要件と手続が異なります。


取締役指名権・取締役会オブザーバー権を確認する

株主間契約には、特定の株主が取締役候補者を指名できる取締役指名権や、取締役会へ出席して資料・説明を受ける取締役会オブザーバー権が定められることがあります。

指名権と実際の選任を分ける

取締役指名権があるからといって、指名した者が当然に取締役へ就任するとは限りません。通常は、候補者の指名、会社側の議案提出、契約当事者による議決権行使、株主総会での選任という段階があります。

そのため、誰が候補者を指名できるかだけでなく、他の株主が選任議案に賛成する義務を負うか、会社が議案を提出する義務を負うか、欠員・辞任・解任時に代替候補を指名できるかを確認します。

取締役会オブザーバーは取締役とは異なる

取締役会オブザーバーは、契約に基づいて取締役会へ出席し、資料や説明を受ける立場として定められることがありますが、通常、取締役そのものではなく、会社法上の議決権を持つとは限りません。

  • 出席範囲:すべての取締役会か、特定議題だけかを確認します。
  • 招集通知:開催日の何日前に、誰から、どの方法で通知されるかを確認します。
  • 資料提供:取締役と同時に同じ資料を受け取れるか、閲覧だけかを確認します。
  • 発言・議決:意見を述べられるか、議決権がないことが明記されているかを確認します。
  • 除外事由:利益相反、秘密保持、法的助言、競合案件などで退席を求められる場合を確認します。
  • 権利消滅:持株比率低下、競合化、上場、契約終了で権利が消えるかを確認します。

会社が株主間契約の当事者でない場合や、オブザーバー受入れの手続が不明確な場合は、実際に出席・資料提供を求められるかを個別に検討する必要があります。


議決権拘束契約・議決権行使条項を確認する

株主間契約には、特定の議案に賛成又は反対する、事前協議に従う、指名された取締役候補者へ投票するなど、議決権行使を拘束する条項が置かれることがあります。このような合意は議決権拘束契約とも呼ばれます。

対象となる会議・議案・期間を具体的に確認する

議決権行使条項は、対象が具体的であるほど内容を把握しやすくなります。株主総会だけか種類株主総会も含むか、取締役選任だけか予算・増資・M&Aも含むか、いつまで続くかを確認してください。

また、本人が出席できないときの委任状提出、議決権行使書の記載、事前協議の方法、棄権の扱い、利害関係がある場合の例外も確認します。

履行請求・仮処分が当然に認められるわけではない

議決権拘束条項に違反する投票が予定されている場合、契約に沿った議決権行使を求められるか、仮処分で緊急に止められるかは、条項の具体性、法的拘束意思、実行時期、保全の必要性などによって変わります。

株主総会が迫っている場合は、招集通知、議案、議決権比率、契約条項、相手方の意向を早期に整理する必要があります。会議後では回復が難しい問題もあるため、日程を放置しないことが重要です。


株式譲渡・売却・退出条項を確認する

株主間契約には、株式を自由に第三者へ売却させないための制限と、一定の場合に少数株主が売却へ参加又は退出するための権利が定められることがあります。

条項名だけで判断せず、通知、期間、売却条件、対象株式、譲受人の加入、表明保証・補償、対価の支払いまで確認します。

条項 主な内容 少数株主の確認点
譲渡制限・ロックアップ 一定期間又は一定条件で第三者譲渡を制限 禁止範囲、例外譲渡、承諾者、違反時の効果
タグアロング 大株主の売却に少数株主が同じ取引で参加 通知期限、参加割合、同一条件、買主の購入義務
ドラッグアロング 一定条件で少数株主にも売却を求める 発動権者、最低価格、対価分配、表明保証・補償
ROFR・ROFO 第三者売却前に既存株主へ購入又は交渉機会を付与 提示条件、回答期間、条件変更時の再提示、売却可能期間
プット・買取請求 一定事由で会社・大株主等に買取りを求める 発動事由、義務者、通知、価格、支払条件、履行可能性

タグアロング・ドラッグアロング・ROFR・ROFO

タグアロングは少数株主が大株主の売却に参加する権利、ドラッグアロングは一定条件で売却を求められる義務、ROFR・ROFOは第三者売却前の優先購入・優先交渉手続です。目的と立場が異なるため、同じ「売却条項」としてまとめて判断しないことが重要です。

具体的な行使方法は、タグアロング条項とは|少数株主が共同売却権を行使する方法ドラッグアロングを行使されたら|少数株主の強制売却・価格・対応ROFR・ROFO条項がある少数株式を売却するには|先買権・優先交渉権で確認してください。

株式買取請求は明示的な根拠を確認する

契約違反や関係悪化があっても、当然に株式を買い取ってもらえるわけではありません。プット・オプション、買取請求、売渡し、買戻しなどの明示的な条項があるか、発動事由、請求相手、価格、通知方法を確認します。

買取条項の具体的な行使要件、相手方、価格、発行会社による自己株式取得の問題は、投資契約・出資契約・株主間契約に基づく株式買取請求|行使要件・相手方・価格で詳しく解説します。


株主間契約に違反された場合の初動

拒否権を無視された、情報が提供されない、取締役指名に協力しない、契約に反して株式が譲渡されそうだという場合は、まず違反条項と緊急性を整理します。本記事では権利の有無と効力を中心に確認し、具体的な救済手段は別途検討します。

条項・義務主体・違反行為を特定する

契約書の何条に、誰の、どのような義務があり、いつまでに何をすべきだったのかを整理します。抽象的な不満ではなく、具体的な条項と事実を対応させることが重要です。

通知・治癒期間・行使期限を確認する

契約違反を理由に履行請求、解除、損害賠償などを検討する場合でも、契約所定の通知方法、宛先、治癒期間、重大違反要件、行使期限を満たす必要があることがあります。メールだけで足りるか、書面や内容証明郵便が必要かも確認します。

会議・増資・株式譲渡が迫る場合は緊急性を確認する

株主総会、取締役会、新株発行、M&A、株式譲渡などが迫っている場合、事後的な損害賠償だけでは目的を達成できないことがあります。招集通知、実行予定日、相手方の通知、議案、契約条項を保存し、仮処分を含む緊急対応の要否を早めに検討します。

履行請求、仮処分、解除、損害賠償、交渉の選び方は、投資契約・株主間契約に違反されたら|履行請求・仮処分・解除・損害賠償で詳しく解説します。

注意

契約違反があるように見えても、直ちに解除通知や株式買取請求を出すと、通知要件・治癒期間・交渉関係を損なうことがあります。条項と目的を整理してから対応します。


弁護士に相談する前に整理すべき資料

株主間契約の効力や権利行使は、契約書1通だけでは判断できないことがあります。変更契約、定款、株主構成、議事録、通知履歴を横断して確認するため、関連資料をできる限り集めます。

  • 契約関係:株主間契約、投資契約、出資契約、株式引受契約、変更契約、加入契約、覚書、サイドレターを準備します。
  • 会社関係:最新定款、株主名簿、登記事項証明書、資本政策表、種類株式の内容を確認します。
  • 機関決議:株主総会・取締役会の招集通知、議案、議事録、議決権行使書を集めます。
  • 情報提供:月次資料、決算書、予算、事業計画、投資家向け報告、未提供資料の一覧を整理します。
  • やり取り:メール、チャット、通知書、回答書、説明資料、録音、送信記録を保存します。
  • 株式移動:譲渡通知、買主提示条件、タグ・ドラッグ・ROFR・ROFOの通知、加入契約を確認します。
  • 希望する解決:情報開示、拒否権行使、役員派遣、契約履行、株式売却・買取、損害賠償などを整理します。

時系列メモには、契約締結、出資、持株比率の変化、問題となる行為、通知、回答、会議予定、株式譲渡予定を日付順に記載します。自分で法的評価を決める必要はありませんが、事実と希望する解決を分けて整理すると、検討が進みやすくなります。

坂尾陽弁護士

株主間契約の相談では、最初の契約書だけでなく、変更契約、加入契約、最新定款、株主名簿、議事録、通知・メールが重要です。現在の権利関係が分かる資料をまとめて確認しましょう。

よくある質問

株主間契約は定款より優先しますか

一律に優先するとはいえません。株主間契約は契約当事者間の権利義務を定め、定款は株式会社の組織・株式・機関に関する基本ルールとして機能します。両者が異なる場合は、契約違反の問題と会社法上の行為・決議の効力を分けて検討します。

会社が株主間契約の当事者でない場合でも情報提供を求められますか

契約上の義務者が誰かによります。会社が当事者でなければ会社へ直接契約責任を求めにくい場合がありますが、経営株主が会社に情報提供させる義務を負っていることもあります。また、会社法上の株主権を別途検討できる場合があります。

株式を取得した新株主は自動的に株主間契約へ拘束されますか

自動的に拘束されるとは限りません。株式譲渡の条件として加入契約を締結する条項、譲渡人が加入を確保する義務、契約上の地位を承継する合意があるかを確認します。

事前承諾を得ずに株主総会決議が行われた場合、決議は無効ですか

株主間契約への違反があっても、決議が当然に無効になるとは限りません。契約上の責任と、会社法・定款上の決議効力は別に判断します。決議日が迫っている場合は、事後対応だけでなく緊急の差止めが可能かを早めに検討します。

取締役指名権があれば、指名者は必ず取締役になれますか

必ず就任できるとは限りません。誰が候補者を指名し、会社が議案を提出し、他の株主がどのように議決権を行使する義務を負うかを確認する必要があります。実際の選任には会社法上の手続も必要です。

情報提供を拒否された場合はどうすればよいですか

契約条項、対象資料、提供期限、拒否事由、秘密保持条件を確認し、未提供資料を具体的に特定して請求します。契約上の請求に加え、会社法上の株主権を検討できる場合もあります。株主総会や資金調達が迫っているときは緊急性も確認します。

株主間契約違反があれば株式買取請求をできますか

契約違反だけで当然に買取請求権が生じるわけではありません。違反を発動事由とするプット・買取条項があるか、重大性、通知、治癒期間、請求相手、価格の要件を満たすかを確認します。


まとめ

株主間契約は、少数株主が会社運営へ関与し、情報を受け取り、役員を指名し、株式を売却・退出するための重要な根拠になり得ます。一方で、契約名や条項名だけでは権利行使の可否を判断できません。

  • 自分、会社、他の株主、新株主が契約当事者かを確認します。
  • 有効期間、持株比率要件、終了事由、加入・承継、存続条項を確認します。
  • 契約当事者間の効力、会社・非当事者への効力、会社法上の決議効力を分けます。
  • 事前承諾、情報提供、取締役指名、オブザーバー、議決権行使は手続まで確認します。
  • 売却・退出条項は通知、期限、条件、価格、譲受人加入まで確認します。

株主間契約に基づいて行動する前には、最新の契約一式、定款、株主名簿、議事録、通知・メールを揃え、どの条項を根拠に、誰へ、何を求めるのかを整理してください。契約違反や会議・株式譲渡が迫っている場合は、期限を過ぎる前に対応方針を検討することが重要です。

坂尾陽弁護士

株主間契約は、少数株主のための強い権利になり得る一方、使い方を誤ると決議効力や通知手続をめぐる争いが広がります。現在の契約関係と目的を整理してから権利行使を進めましょう。

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