少数株主の弁護士費用と成功報酬|非上場株式売却・株式譲渡の費用体系

少数株主が保有する少数株式や非上場株式は、上場株式のように市場で簡単に売却できるとは限りません。会社や大株主に買い取ってもらう交渉、第三者への株式譲渡、譲渡制限がある場合の手続、株式価値の確認など、複数の論点を整理しながら進める必要があります。

そのため、少数株主の弁護士費用は、一般的な契約書レビューや単純な金銭請求とは異なり、株式価値、売却見込み、相手方の対応、会社資料の有無、裁判手続に進む可能性などによって変わります。すべての案件で当然に利用できるわけではありません、完全成功報酬制を利用できる場合もあります。

本記事では、主に少数株式の売却、非上場株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉を弁護士に依頼する場合の費用体系を説明します。あわせて、資料が手元にない場合の相談方法や、少数株主権の行使だけをスポットで依頼する場合の考え方も整理します。

  • 少数株主の弁護士費用は、相談料・着手金・成功報酬・タイムチャージ・実費などに分かれます。
  • 少数株式の売却や買取交渉では、完全成功報酬制や着手金を抑えた費用体系を検討できる場合があります。
  • 資料が手元になくても相談可能であり、売却支援の中で必要な資料請求を検討することがあります。
  • 売却支援を依頼せず、少数株主権行使だけをスポットで依頼する場合は、別の費用体系になります。

坂尾陽弁護士

費用だけで判断するのではなく、株式の価値、売却可能性、相手方との関係を整理してから方針を決めることが大切です。
(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年  京都大学法学部卒業
2011年  京都大学法科大学院修了
2011年  司法試験合格
2012年~ 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業

弁護士 坂尾陽

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少数株主が弁護士に依頼する場合の費用項目

少数株主が弁護士に依頼する場合の費用は、依頼内容によって組み合わせが変わります。少数株式や非上場株式の売却、株式譲渡、会社・大株主への買取交渉では、売却代金という成果が見込まれるため、成功報酬型や完全成功報酬型を検討しやすい場面があります。

一方で、裁判手続、鑑定、複雑な資料分析、長期の交渉が必要になる場合には、完全成功報酬制だけではなく、着手金と成功報酬を組み合わせる方法や、タイムチャージを併用する方法が合理的な場合もあります。少数株式を売却する方法の全体像は、少数株式を売却する方法でも整理しています。

株式売却時の弁護士費用の目安

任意の交渉で少数株式の売却を弁護士に依頼することを前提とすると、
・着手金:15-50万円
・報酬金:10-20%
が、少数株式の売却・株式譲渡・会社又は大株主への買取交渉を弁護士に依頼する場合の目安です。

もっとも上記は一般的・初期的な交渉のみの弁護士費用であり、裁判対応等が必要になる場合には別途追加費用が必要となります。

実際の費用体系は、株式価値、売却見込み、資料の有無、相手方の対応、裁判手続の可能性などを確認したうえで個別にお見積りします。

相談料・初回相談料

相談料は、弁護士に事情を伝え、対応方針や費用体系の見通しを確認するための費用です。少数株主の相談では、保有株式数、会社との関係、これまでの配当や買取提案、会社資料の有無などを確認し、売却交渉として進めるのか、まず資料確認を行うのか、裁判手続まで視野に入れるのかを整理します。

初回相談で確認すべきことは、単に「費用がいくらか」だけではありません。保有株式にどの程度の価値があり得るのか、会社や大株主との交渉余地があるのか、完全成功報酬制の対象になり得るのかを確認することが重要です。相談の入口は、少数株主の無料相談から確認できます。

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無料相談では弁護士費用の見積りもご要望に応じて無料で行いますのでご安心ください!

着手金

着手金は、依頼を受けて交渉、資料確認、通知書作成、相手方対応などを開始するための費用です。少数株主案件では、最初から着手金を設定する場合もあれば、売却見込みや株式価値を踏まえて、着手金を抑えた成功報酬型を検討する場合もあります。

着手金の有無や金額は、相手方の対応が見込めるか、会社資料があるか、譲渡制限株式か、裁判手続に進む可能性があるかなどによって変わります。着手金があるから悪い、着手金がないから必ず有利という単純な比較ではなく、依頼範囲と見込まれる作業量に合っているかを確認する必要があります。

成功報酬

成功報酬は、株式の売却、買取価格の合意、株式譲渡代金の回収など、一定の成果が得られた場合に発生する報酬です。

成功報酬型の費用体系は、依頼者と弁護士が「少数株式を適正な条件で換価する」という同じ方向を向きやすい点に特徴があります。ただし、成果の定義、報酬の計算対象、消費税や実費の扱いなどは、依頼前に確認しておく必要があります。

完全成功報酬制

完全成功報酬制は、主に少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉のように、売却代金という成果が見込まれる案件で検討される費用体系です。適用される場合には、売却できなければ基本的に費用がかからないため、費用倒れを避けたい少数株主にとって利用しやすい場合があります。

もっとも、完全成功報酬制は、すべての少数株主案件で利用できるわけではありません。株式価値、売却見込み、相手方の対応、会社資料の有無、裁判手続の見込みなどを踏まえ、弁護士が適用可能性を判断します。完全成功報酬制の詳しい適用条件やデメリットは、後続の本文で整理します。

タイムチャージ

タイムチャージは、弁護士の作業時間に応じて費用を算定する方式です。少数株主案件では、価格評価の検討、会社資料の分析、契約書や提案書の確認、相手方との複数回の交渉、裁判手続の準備など、作業量が事前に読み切れない場合に使われることがあります。

ただし、タイムチャージは作業時間に応じて費用が増えるため、少数株主側からすると見通しが立ちにくい面もあります。そのため、依頼範囲を区切る、段階ごとに見積りを確認する、売却交渉部分は成功報酬型で進めるなど、案件に応じた設計が重要です。

実費・裁判手続に進む場合の費用

実費とは、郵送費、登記簿や資料の取得費用、裁判所に納める費用、必要に応じた専門家費用など、弁護士報酬とは別に発生する支出をいいます。少数株式の売却交渉が任意交渉でまとまる場合と、裁判手続や株価評価の専門的検討が必要になる場合とでは、見込まれる実費や作業量が異なります。

実費や裁判手続の負担が大きく見込まれる案件では、そもそも完全成功報酬制ではなく、着手金と成功報酬を組み合わせる方法や、段階的な見積りを行う方法を提案することがあります。非上場株式売却の全体像については、非上場株式売却の解説も参考になります。

少数株式・非上場株式売却の弁護士費用が変わる理由

少数株式や非上場株式の売却に関する弁護士費用は、単純な料金表だけでは判断しにくい分野です。なぜなら、同じ「少数株主からの相談」であっても、売却できる見込み、交渉相手、保有割合、会社資料の有無、裁判手続の可能性によって、弁護士が行う作業も、見込まれる成果も大きく異なるからです。

特に、少数株式の売却では、会社側から低い価格を提示されている場合、会社が資料を開示しない場合、親族会社や同族会社で感情的対立がある場合など、単なる契約交渉にとどまらない事情が生じやすくなります。そのため、費用体系を検討する際には、以下のような要素を確認します。

株式価値と売却見込み

まず重要なのは、保有している株式にどの程度の価値があり得るか、現実に売却や買取交渉が成立する見込みがあるかです。会社の財務状況が良好で、買い手候補や会社・大株主との交渉余地がある場合には、成功報酬型や完全成功報酬型を検討しやすくなります。

一方で、会社の財務状況が不明である、配当がない、会社側が株式の価値を極端に低く見ている、買い手候補が見当たらないといった場合には、まず資料確認や価格評価の見通しを整理する必要があります。非上場株式の評価方法そのものは、非上場株式の評価・株価算定で詳しく整理しています。

会社・大株主・第三者のどこに売却するか

少数株式の売却先としては、会社、大株主、親族、第三者、買取業者などが考えられます。会社や大株主に買い取ってもらう場合は、会社側の資金状況、支配株主の意向、過去の買取提案、親族関係などが交渉に影響します。第三者に譲渡する場合は、譲渡制限や会社の承認手続が問題になることがあります。

相手方が会社や大株主である場合、少数株主側は情報量や交渉力で不利になりがちです。そのため、弁護士が入ることで、価格の根拠、交渉資料、法的手続の選択肢を整理しながら進める意味があります。会社・大株主への交渉は、会社・大株主への買取交渉でも解説しています。

会社資料を入手できているか

少数株主が株式の売却を検討する場合、会社の決算書、株主名簿、定款、株主総会資料、配当資料などが重要になります。しかし、親族会社や同族会社では、少数株主が会社経営から排除され、当然に受け取れるはずの資料すら手元にないことがあります。

資料がないからといって、直ちに相談できないわけではありません。少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉をご依頼いただく場合には、弁護士が売却支援のために必要・相当と判断する範囲で、会社への資料請求や株主としての権利行使を検討します。資料取得や少数株主権については、後半で整理します。

任意交渉で終わるか、裁判手続に進むか

少数株主案件では、任意交渉で会社や大株主と売却条件を合意できる場合もあれば、譲渡承認、指定買取人、売買価格決定申立て、その他の裁判手続を検討する場合もあります。任意交渉でまとまる見込みが高い案件と、裁判所で価格や権利関係を争う可能性が高い案件では、必要な作業量が異なります。

裁判手続に進む場合には、株式の評価方法、会社資料の分析、相手方主張への反論、裁判所への説明資料などが問題になります。そのため、最初から完全成功報酬制だけで進めるのではなく、着手金と成功報酬を組み合わせる方法や、段階ごとに費用体系を確認する方法が適している場合があります。

注意

ここでいう費用体系の違いは、売却支援を依頼している場合に、資料請求や株主としての権利行使のたびに当然に別費用が発生するという意味ではありません。売却支援のために必要・相当な対応は、依頼範囲の中で検討します。他方で、売却支援を依頼せず、権利行使だけをスポットで依頼する場合は、別の費用体系になります。

完全成功報酬制で依頼できるケースとデメリット

少数株式の売却、非上場株式の株式譲渡、会社・大株主との買取交渉では、売却代金という成果が見込まれるため、案件によっては完全成功報酬制を検討できる場合があります。完全成功報酬制とは、売却や買取が成立した場合に報酬を支払うことを基本とし、初期費用を抑えやすい費用体系です。

もっとも、完全成功報酬制は、すべての少数株主案件に当然に適用されるものではありません。株式価値、売却見込み、会社資料の有無、相手方の対応、裁判手続に進む可能性などを確認し、弁護士が成果を見込める案件か、どの範囲まで対応できる案件かを判断する必要があります。

完全成功報酬制を使いやすいケース

完全成功報酬制を使いやすいのは、少数株式の売却や会社・大株主への買取交渉について、一定の売却可能性が見込まれるケースです。たとえば、会社の業績や純資産に照らして株式価値が見込まれる場合、会社又は大株主が株式の取得に関心を示している場合、株主間の関係や過去の交渉経緯から任意交渉で解決できる可能性がある場合などが考えられます。

また、少数株主が会社資料を十分に持っていない場合でも、売却支援の中で資料取得の方法を検討できることがあります。資料が不足していることだけを理由に、直ちに完全成功報酬制の検討対象から外れるわけではありません。重要なのは、資料の不足を踏まえても、売却・買取交渉として進める合理的な見込みがあるかどうかです。

完全成功報酬制が適しているかは、無料相談の段階で、株式の保有割合、会社の規模、配当の有無、過去の買取提案、会社・大株主とのやり取り、資料の入手状況などを確認して判断します。少数株式を売却する方法の全体像は、少数株式を売却する方法でも整理しています。

売却できなかった場合の費用

完全成功報酬制が適用される場合、少数株式の売却や買取が成立しなければ、基本的に弁護士費用は発生しない形で設計されます。売却代金が得られないにもかかわらず弁護士費用だけが残る、いわゆる費用倒れの不安を抑えやすいことが、完全成功報酬制の大きなメリットです。

ただし、この説明は、あくまで完全成功報酬制として受任できる案件であることが前提です。裁判手続、鑑定、専門家費用、長期の資料分析などが当初から見込まれる場合には、そもそも完全成功報酬制ではなく、別の費用体系を提案することがあります。

したがって、「売却できなければ費用がかからないか」を確認する際は、単に費用名だけを見るのではなく、どこまでの業務が完全成功報酬制の対象になるのか、裁判手続や第三者費用が必要になった場合にどのように扱うのかを、依頼前に確認することが重要です。

完全成功報酬制のデメリット

完全成功報酬制には、初期費用を抑えやすいというメリットがある一方で、デメリットもあります。特に少数株主案件では、依頼できる案件、適用条件、対応範囲が限定される点に注意が必要です。

完全成功報酬制の主なメリットは、初期費用を抑えやすいこと、売却できた場合に報酬を支払うため費用倒れの不安を抑えやすいこと、弁護士と依頼者が「売却・換価」という同じゴールを共有しやすいことです。

一方で、完全成功報酬制には、次のような注意点があります。

  • 依頼できる案件が限られる:株式価値や売却見込みが乏しい場合、完全成功報酬制での受任が難しいことがあります。
  • 適用条件が限られる:任意交渉を中心に進められる案件では検討しやすい一方、裁判手続や鑑定が当初から見込まれる案件では別の費用体系になることがあります。
  • 対応範囲が限定されることがある:売却支援のために必要な対応は検討しますが、売却と無関係な権利行使や訴訟対応まで無制限に含まれるわけではありません。

完全成功報酬制は、費用を抑えるための便利な制度ではありますが、少数株主案件のすべてに適する万能の費用体系ではありません。

特に注意すべきなのは、完全成功報酬制を「弁護士がどのような作業でも無制限に対応する制度」と誤解しないことです。少数株式の売却や買取交渉という目的に沿って、必要な範囲の対応を行う費用体系であり、目的や範囲が異なる依頼については、別途見積りが必要になることがあります。

完全成功報酬制だけが正解ではないケース

少数株主にとって、初期費用を抑えられることは重要です。しかし、完全成功報酬制だけが常に最適とは限りません。案件によっては、着手金と成功報酬を組み合わせることで、裁判手続や価格評価まで見据えた対応をしやすくなる場合があります。

たとえば、会社側が買取に強く反発している場合、会社資料の開示を拒んでいる場合、売買価格決定申立てなどの裁判手続に進む可能性が高い場合、株価評価の専門的な検討が必要な場合には、弁護士の作業量やリスクが大きくなります。このような案件では、完全成功報酬制にこだわるよりも、段階ごとに費用を確認しながら進める方が、結果的に適切な対応につながることがあります。

費用体系は、相談時に固定的に決めるものではなく、株式価値、売却見込み、相手方の対応、資料の有無を踏まえて、もっとも合理的な方法を検討します。完全成功報酬制で進められるかを知りたい場合は、少数株主の無料相談で事情を整理することができます。

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着手金+成功報酬・タイムチャージが向いているケース

少数株主の弁護士費用では、完全成功報酬制だけでなく、着手金+成功報酬、タイムチャージ、段階的な見積りなどを組み合わせる場合があります。これは、弁護士費用を複雑にするためではなく、案件の性質に応じて、必要な作業と成果の見込みを適切に反映するためです。

特に、裁判手続や株価評価が問題になる案件では、任意交渉だけで解決できる案件よりも、資料分析、主張整理、相手方反論への対応、裁判所への説明などが必要になります。そのため、完全成功報酬制ではなく、別の費用体系を選ぶ方が合理的な場合があります。

裁判手続や売買価格決定申立てに進む場合

譲渡制限株式の譲渡承認をめぐる手続や、会社又は指定買取人との売買価格決定申立てに進む場合、費用体系は任意交渉とは異なる設計になることがあります。裁判手続では、単に相手方と交渉するだけではなく、法律上の要件、期限、申立ての内容、株式価格の根拠、会社資料の分析などを整理する必要があるためです。

非上場株式の売買価格をめぐる裁判例では、株式割合、支配関係、配当の有無、会社の収益力、純資産、過去の取引事例など、さまざまな事情が検討されています。たとえば、東京高裁平成20年4月4日決定では、譲渡人が発行済株式総数の40%を保有し、特別決議を拒否できる立場にあったことや、譲受人が当該株式を取得すると会社を完全に支配できることなどを踏まえ、収益還元法による評価が採用されました。

このように、裁判手続に進む可能性がある案件では、株式割合や支配関係を確認し、どの評価方法が問題になり得るかを検討する必要があります。売買価格決定申立ての手続自体は、売買価格決定申立てで詳しく解説しています。

株価評価・資料分析が必要な場合

株価評価や資料分析が必要な案件では、弁護士だけでなく、公認会計士、税理士、不動産鑑定士などの専門家との連携が必要になることがあります。会社の決算書、税務申告書、貸借対照表、損益計算書、保有不動産、配当実績、事業計画などを確認しなければ、売却価格の見通しを立てにくい場合があるためです。

福岡高裁平成21年5月15日決定では、DCF法について、事業計画や割引率の決定に困難が伴うことを指摘しつつ、継続企業価値の把握という面ではDCF法を全面的に無視することはできないとしました。そのうえで、純資産法も併用し、DCF法と純資産法を組み合わせて評価しています。

このような裁判例からも分かるように、株価評価は、単に一つの計算式を当てはめれば終わるものではありません。どの評価方法を使うか、どの資料を基礎にするか、会社側の主張にどう反論するかによって、必要な作業量が変わります。非上場株式の評価方法の詳細は、非上場株式の評価・株価算定で解説しています。

スポット意見書や契約書確認を依頼する場合

少数株主からの相談には、売却交渉全体の依頼だけでなく、会社から提示された株式譲渡契約書の確認、買取価格の妥当性に関する意見、交渉方針の検討、会社への通知書の作成など、限定的な依頼もあります。

このようなスポット依頼は、売却代金という成果に連動する完全成功報酬制よりも、作業範囲を明確にしたうえで個別に費用を見積もる方が適している場合があります。たとえば、契約書の確認だけを依頼する場合、売却交渉全体を受任する場合とは、弁護士が負う役割も責任も異なります。

ただし、スポット依頼として一部だけを確認する場合でも、その後の交渉や売却条件に大きく影響することがあります。会社や大株主から買取提案を受けている場合は、契約書だけを見るのではなく、提示価格、支払条件、譲渡制限、表明保証、秘密保持、将来の紛争リスクなども含めて確認することが重要です。

MEMO

完全成功報酬制、着手金+成功報酬、タイムチャージ、スポット依頼のどれが適しているかは、費用を安く見せるためではなく、依頼内容と成果の見込みに合っているかで判断します。少数株式の売却を目指す場合と、契約書確認や意見書だけを依頼する場合では、適した費用体系が異なります。

資料がなくても相談できる|売却支援の中で資料請求を検討する場合

少数株主の方は、会社の決算書、株主名簿、会計帳簿、定款などを十分に持っていないことがあります。親族会社や同族会社では、経営に関与していない少数株主が会社資料を受け取れず、株式の価値や売却可能性を判断できないまま放置されていることもあります。

しかし、資料が手元にないからといって、相談できないわけではありません。少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉をご依頼いただく場合には、弁護士が売却支援のために必要・相当と判断する範囲で、会社への資料請求や株主としての権利行使を検討します。

この点は、特に誤解されやすいところです。資料がない場合に、直ちに会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求だけを別途スポットで依頼しなければ動けない、という意味ではありません。売却支援のために必要な資料取得は、売却方針を検討するための一部として位置づけられます。

あると相談がスムーズな資料

相談時にすべての資料がそろっている必要はありません。ただし、次のような資料があると、株式価値、売却見込み、交渉方針、相手方の対応を整理しやすくなります。

  • 株主としての地位が分かる資料:株券、株主名簿、株式取得時の資料、相続関係資料、遺産分割協議書など。
  • 会社の基本資料:定款、登記事項証明書、株主総会招集通知、株主総会議事録、役員構成が分かる資料など。
  • 会社の財務資料:決算書、税務申告書、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳書、配当通知など。
  • 会社・大株主とのやり取り:買取提案、価格提示、メール、手紙、LINE、議事録、面談メモなど。
  • 過去の売却・買取に関する資料:他の株主の売却事例、会社からの買取打診、第三者への譲渡相談の記録など。

資料が一部しかなくても、現在分かっている事情から相談を始めることはできます。むしろ、資料がない状態で会社や大株主と直接交渉を続けると、相手方の提示価格や説明を十分に検証できないまま、不利な条件を受け入れてしまうおそれがあります。

資料が手元になくても相談できる

少数株主は、会社の内部情報にアクセスしにくい立場にあります。会社が親族会社や同族会社である場合、他の親族や大株主が経営を握っており、少数株主には決算書や株主名簿が十分に共有されないこともあります。

そのような場合でも、まずは保有株式数、取得経緯、会社との関係、過去の配当、会社や大株主からの連絡内容、売却したい理由などを整理すれば、相談を進めることができます。弁護士は、手元資料の有無だけでなく、どの資料が不足しているのか、その資料を取得する必要があるのか、取得方法としてどのような選択肢があるのかを確認します。

会社資料がないこと自体は、少数株主案件では珍しくありません。大切なのは、資料がないまま諦めることではなく、どの資料が売却交渉や価格判断に必要なのかを整理することです。

売却支援のために必要・相当な資料請求を検討することがある

少数株式の売却や買取交渉を進めるためには、会社の財務状況、株主構成、過去の配当、資産状況、譲渡制限の有無などを確認する必要があります。弁護士が売却支援を受任した場合、これらの確認のために必要・相当と判断される範囲で、会社への資料請求や株主としての権利行使を検討します。

たとえば、会社の会計資料を確認する必要がある場合には会計帳簿閲覧請求が、他の株主や株主構成を確認する必要がある場合には株主名簿閲覧請求が問題になることがあります。これらは、売却・買取交渉の前提となる情報を得るために検討される手段です。

ただし、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求の要件、請求方法、会社が拒否した場合の対応は、それぞれ別の論点です。少数株主権の全体像は少数株主権の概要、会計資料の確認については会計帳簿閲覧請求、株主構成の確認については株主名簿閲覧請求で詳しく解説しています。

ポイントは資料が不足している場合でも、売却支援の中で必要な資料取得を検討できるという点です。資料不足を理由に、最初から売却や買取交渉を諦める必要はありません。

坂尾陽弁護士

会社側が買取交渉に任意に応じている場合は、追加の弁護士費用等を頂戴せず株式の売却支援に付随して資料等を取得するのでご安心ください。

裁判手続や第三者費用が必要な場合は事前に確認する

売却支援の中で資料請求や株主としての権利行使を検討する場合でも、すべての手続や費用が無制限に含まれるわけではありません。裁判手続、鑑定、第三者専門家の費用、裁判所に納める費用などが必要になる場合には、事前に見積りや費用負担の要否を確認します。

たとえば、任意の資料請求で足りる場合と、会社が拒否して裁判手続を検討する場合とでは、必要な対応が異なります。また、株価評価のために公認会計士や不動産鑑定士等の専門家の関与が必要になる場合には、弁護士費用とは別に第三者費用が問題になることがあります。

したがって、資料がない場合の対応は、「別途費用がかかるから相談しにくい」という方向ではなく、「売却支援に必要な範囲で何を行うかを相談時に整理する」という方向で考えるべきです。必要な手続と費用の見通しを事前に確認することで、費用倒れを避けながら、少数株式の売却可能性を検討しやすくなります。

事例・裁判例から見る費用設計の考え方

少数株式の売却や非上場株式の株式譲渡では、同じ「少数株主の弁護士費用」といっても、案件ごとに必要な対応が大きく変わります。会社や大株主が任意の買取に前向きな案件と、会社資料の取得、株価評価、裁判手続まで見込まれる案件では、弁護士の作業量も、費用体系の組み立て方も異なります。

そのため、費用を検討するときは、単に「成功報酬か」「着手金があるか」だけを見るのではなく、どのような成果を目指す案件なのか、どの段階まで弁護士に依頼するのかを整理することが重要です。特に、少数株式の売却では、会社の財務状況、株式割合、相手方の対応、資料の有無、交渉経緯によって、売却可能性や必要な手続が変わります。

売却見込みが高い案件では初期費用を抑えやすいことがある

少数株主が保有する株式について、会社や大株主に買取ニーズがあり、会社の業績や純資産に照らして一定の株式価値が見込まれる場合には、成功報酬型や完全成功報酬型を検討しやすくなります。売却代金という成果が比較的明確であり、弁護士と依頼者が「株式を適正な条件で換価する」という同じゴールを共有しやすいためです。

もっとも、売却見込みが高いかどうかは、株式割合だけで決まるものではありません。たとえば、同族会社では、大株主との関係、親族間の経緯、会社の資金状況、過去の買取提案、配当の有無、将来の相続関係などが交渉に影響します。過去に高額の買取事例がある場合でも、同じ結果が当然に再現されるわけではありません。

実際の解決イメージを確認したい場合は、少数株主の解決事例も参考になります。ただし、事例はあくまで個別事情に基づく結果であり、ご自身の株式については、会社資料や交渉経緯を確認したうえで見通しを立てる必要があります。

裁判手続や評価方法が問題になる案件では費用体系を調整することがある

任意交渉で解決できない場合や、会社側から提示された価格が低い場合には、売買価格決定申立てなどの裁判手続を検討することがあります。このような案件では、単に交渉を行うだけでなく、株価評価の考え方、財務資料の分析、相手方が提出する算定資料への反論などが重要になります。

たとえば、東京高裁平成20年4月4日決定では、譲渡人が発行済株式総数の40%を保有し、特別決議を拒否できる立場にありました。譲受人がその株式を取得すると会社を完全に支配できる状況であったため、裁判所は単なる一般投資家の少数株式とは異なる事情を踏まえ、収益還元法による評価を採用しました。このように、株式割合や支配関係は、価格評価にも費用見積りにも影響します。

また、福岡高裁平成21年5月15日決定では、DCF法には事業計画や割引率の決定に困難があるとしながらも、継続企業価値の把握という面では全面的に無視できないとされ、純資産法との併用が問題になりました。東京地裁平成26年9月26日決定でも、譲渡人の保有割合や会社の事業リスクを踏まえ、配当還元法、DCF法、純資産法を組み合わせて価格を判断しています。

これらの裁判例は、費用ページで株価評価の詳細を解説するためのものではありません。重要なのは、裁判手続に進む案件では、評価方法や資料分析が問題になりやすく、完全成功報酬型だけではなく、着手金と成功報酬の組み合わせや、段階的な費用見積りが合理的になる場合があるという点です。売買価格決定申立ての流れは、売買価格決定申立ての解説で詳しく整理しています。

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裁判で少数株式の売買価格を争う場合は、裁判例に照らした見通しがつくことや、適正価格での売却が期待できることから、弁護士費用倒れのリスクを回避しやすくなります。

事例を見るときは結果だけでなく前提条件を見る

少数株主の売却事例では、最終的な売却金額や解決結果が注目されがちです。しかし、弁護士費用の見通しを考えるうえでは、結果だけでなく、どのような前提条件があったかを見る必要があります。

  • 株式割合:少数株主であっても、拒否権や交渉上の影響力を持つ割合かどうかで見通しが変わります。
  • 会社資料:決算書、株主名簿、会計資料、過去の配当・買取提案の有無によって、評価や交渉の進め方が変わります。
  • 相手方の姿勢:会社や大株主が任意買取に前向きか、価格を争う姿勢かによって、交渉期間や手続が変わります。
  • 裁判手続の可能性:任意交渉でまとまるか、裁判所で価格や権利関係を争う必要があるかで、費用体系が変わる場合があります。

したがって、事例や裁判例は、「同じような金額で売却できるか」を判断するためだけに見るものではありません。ご自身の案件でどのような費用体系が適しているかを考えるために、株式価値、売却見込み、資料の有無、相手方との関係を整理する材料として見ることが大切です。株価評価の考え方は、非上場株式の評価・株価算定でも整理しています。

少数株主権の行使だけをスポットで依頼する場合の弁護士費用

ここまで説明してきた費用体系は、主に少数株式の売却、非上場株式の株式譲渡、会社・大株主との買取交渉を弁護士に依頼する場合を前提としています。これに対し、売却支援を依頼せず、会計帳簿閲覧請求、株主名簿閲覧請求、株主総会招集請求、株主提案権などの少数株主権行使だけをスポットで依頼する場合には、別の考え方が必要です。

権利行使だけのスポット依頼では、少数株式の売却代金という成果が発生するとは限りません。そのため、完全成功報酬型や着手金を抑えた成功報酬型を当然に適用するのではなく、対応範囲、手続の難易度、会社側の対応、裁判所手続の要否などを踏まえて、個別に弁護士費用を見積もるのが通常です。

坂尾陽弁護士

本ページは主に少数株式の売却を弁護士に依頼いただいたことを前提とした説明です。ここでは少数株主権の行使だけを依頼するという本サイトがあまり想定してないケースを念頭に置いた説明です。

売却支援を依頼している場合と、権利行使だけを依頼する場合は違う

まず区別すべきなのは、少数株式の売却支援を依頼している場合と、権利行使だけを切り出して依頼する場合です。売却支援を依頼している場合には、弁護士が売却や買取交渉のために必要・相当と判断する範囲で、会社への資料請求や株主としての権利行使を検討します。

たとえば、会社の決算書や株主名簿が手元にない場合でも、それだけで売却相談を諦める必要はありません。売却方針を検討するために資料取得が必要であれば、売却支援の一部として、どの資料をどのように求めるかを整理します。

他方で、売却や買取交渉を依頼せず、「会計帳簿閲覧請求だけを依頼したい」「株主名簿閲覧請求だけを依頼したい」という場合は、売却支援とは別のスポット案件になります。この場合には、売却代金を基準にした成功報酬型ではなく、依頼範囲に応じた個別見積りになります。

会計帳簿閲覧請求・株主名簿閲覧請求だけを依頼する場合

少数株主からのスポット依頼として検討されやすいものに、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求があります。会計帳簿閲覧請求は、会社の会計帳簿や関連資料を確認し、会社の財務状況、不透明な支出、株式価値の判断材料を把握するために検討されることがあります。詳しい要件や進め方は、会計帳簿閲覧請求の解説を確認してください。

株主名簿閲覧請求は、他の株主や株主構成を確認したい場合、会社や大株主との交渉先を把握したい場合、株主総会対応や共同での権利行使を検討する場合などに問題になります。こちらも、具体的な要件や拒絶事由は、株主名簿閲覧請求の解説で整理しています。

もっとも、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求だけで、少数株主の問題が解決するとは限りません。資料を取得しても、その後に会社や大株主との交渉、株式の売却、買取価格の協議、場合によっては裁判手続の検討が必要になることがあります。そのため、基本的には、資料請求だけでなく、少数株式の売却や買取交渉までを視野に入れて相談することをおすすめします。

株主総会招集請求・株主提案権などを依頼する場合

少数株主権行使としては、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求のほか、株主総会招集請求、株主提案権、定款・株主総会議事録・計算書類等の閲覧請求などが問題になることもあります。これらは、会社の状況を把握するため、会社や大株主に説明を求めるため、又は交渉材料を得るために検討されることがあります。

ただし、本ページでは、少数株主権の要件や手続を網羅的に解説することはしません。各権利で何ができるか、どのような要件があるか、どのような場面で使うべきかは、少数株主権の概要で整理しています。

費用面では、株主総会招集請求や株主提案権だけをスポットで依頼する場合も、対応範囲によって作業量が変わります。通知書の作成にとどまるのか、会社とのやり取りを含むのか、裁判所手続まで見込むのかによって検討事項が変わるため、一律の費用ではなく個別見積りになります。

株主総会への弁護士出席・同席を依頼する場合

株主総会への対応については、弁護士の出席、同席、代理人としての関与を検討できる場合があります。たとえば、株主総会で質問をしたい、会社側の説明を記録したい、議決権行使や委任状の扱いに不安がある、親族会社の総会で一人では対応しにくいといった場面です。

もっとも、弁護士が株主総会にどのように関与できるかは、会社の定款、委任状の内容、代理人資格に関する定め、当日の運営、会社側の対応によって変わります。株主本人が出席するのか、弁護士が同席するのか、代理人として出席するのかによって検討すべき点も異なります。

したがって、株主総会への弁護士出席・同席を希望する場合も、単に「総会に出てもらう」という依頼ではなく、何を目的に出席するのかを整理する必要があります。資料取得、説明要求、議決権行使、売却交渉への布石など、目的が明確であれば、必要な対応範囲と費用の見積りもしやすくなります。

権利行使だけのスポット依頼では完全成功報酬型がなじみにくい

少数株主権行使だけをスポットで依頼する場合に特に注意すべきなのは、完全成功報酬型や着手金を抑えた成功報酬型がなじみにくいという点です。完全成功報酬型は、主に少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉のように、売却代金という成果が見込まれる案件で検討される費用体系です。

これに対し、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求、株主総会招集請求、株主提案権などは、資料取得や株主としての権利行使そのものが目的になることがあります。これらの手続では、売却代金が発生するとは限らず、成果の内容も案件ごとに異なります。そのため、権利行使だけをスポットで依頼する場合には、個別の対応範囲に応じて費用を見積もる必要があります。

注意

少数株主権行使だけのスポット依頼は、少数株式の売却支援とは別の依頼類型です。売却支援を依頼している場合に必要・相当な資料請求を検討することと、売却支援を依頼せず権利行使だけを依頼することは、費用体系の考え方が異なります。

なお、株主代表訴訟、役員解任の訴え、会社解散の訴え、検査役選任など、より重い手続が問題になる場合もあります。これらは、少数株主権行使の中でも、売却や買取交渉の準備とは別に、会社の責任追及や経営上の問題に踏み込む手続です。本ページでは深掘りせず、代表訴訟の費用は株主代表訴訟の弁護士費用で確認してください。

少数株主権行使だけを依頼したい場合でも、最初の相談では、権利行使だけで目的を達成できるのか、売却や買取交渉まで視野に入れるべきかを整理することが大切です。資料取得そのものが目的なのか、取得した資料をもとに株式を売却したいのかによって、適した依頼範囲と費用体系は変わります。

坂尾陽弁護士

少数株主権行使のスポット依頼の弁護士費用は数十万円~となるため、ご依頼者様にとっての経済合理性を慎重に判断する必要があります。

FAQ|少数株主の弁護士費用でよくある質問

ここでは、少数株式の売却、非上場株式の株式譲渡、会社・大株主との買取交渉を弁護士に依頼する際によくある質問を整理します。一般的な弁護士費用の説明ではなく、少数株主の立場で問題になりやすい費用体系、完全成功報酬制、資料不足、少数株主権行使との関係を中心に確認します。

少数株主が弁護士に依頼する場合、費用はどのように決まりますか。

少数株主の弁護士費用は、依頼内容、株式価値、売却見込み、相手方の対応、会社資料の有無、裁判手続に進む可能性などを踏まえて決まります。少数株式の売却や買取交渉では、売却代金という成果が見込まれるため、成功報酬型や完全成功報酬型を検討できる場合があります。

他方で、裁判手続、鑑定、複雑な資料分析、長期の交渉が見込まれる場合には、完全成功報酬型だけでなく、着手金と成功報酬を組み合わせる方法や、タイムチャージを併用する方法が合理的な場合もあります。費用体系は、相談時に事案の内容を確認したうえで見積もることになります。

少数株式や非上場株式の売却を完全成功報酬制で依頼できますか。

案件によっては依頼できます。完全成功報酬制は、主に少数株式の売却、非上場株式の株式譲渡、会社・大株主との買取交渉のように、売却代金という成果が見込まれる案件で検討される費用体系です。

もっとも、すべての案件で当然に利用できるわけではありません。会社資料が不足している場合でも直ちに対象外になるわけではありませんが、株式価値や売却可能性を確認しても成果の見込みを立てにくい場合、裁判手続や鑑定が中心になる場合、依頼範囲を広く設定する必要がある場合には、別の費用体系を提案することがあります。

完全成功報酬制で依頼した場合、売却できなければ費用はかかりませんか。

完全成功報酬制が適用される場合、少数株式の売却や買取が成立しなければ、基本的に弁護士費用は発生しない形で設計されます。売却代金が得られないにもかかわらず弁護士費用だけが残る不安を抑えやすい点が、完全成功報酬制の大きな特徴です。

ただし、完全成功報酬制の対象となる依頼範囲は、事前に確認しておく必要があります。裁判手続、鑑定、第三者専門家の費用、裁判所に納める費用などが必要になる場合には、そもそも完全成功報酬制ではなく、別の費用体系を検討することがあります。

完全成功報酬制のデメリットは何ですか。

完全成功報酬制のデメリットは、主に、適用できる案件が限られること、依頼範囲が限られること、対応範囲が限定されることがある点です。弁護士が成果の見込みを判断しにくい案件や、売却以外の対応が中心となる案件では、完全成功報酬制が適さないことがあります。

また、完全成功報酬制は「費用が安い」という意味ではありません。初期費用を抑えやすい一方で、売却が成立した場合には成果に応じた報酬が発生します。そのため、費用だけでなく、どの範囲まで対応してもらえるのか、売却が成立した場合の報酬計算はどうなるのかを事前に確認することが重要です。

株式譲渡の弁護士費用は、通常のM&Aや契約書作成と何が違いますか。

一般的な株式譲渡の弁護士費用は、M&Aの契約書作成、デューデリジェンス、事業承継、買収手続などを前提に説明されることがあります。しかし、本記事で扱うのは、少数株主が保有する少数株式・非上場株式を売却又は譲渡する場合の費用です。

少数株主側の株式譲渡では、会社や大株主との交渉、譲渡制限への対応、株式価値の確認、会社資料の取得、売却先の検討などが問題になります。単に契約書を作るだけではなく、交渉方針や価格の根拠を整理する必要がある点で、一般的なM&A費用とは異なります。

会社の決算書や株主名簿が手元になくても相談できますか。

相談できます。少数株主は、会社経営に関与していなかったり、親族会社・同族会社の中で情報を受け取れていなかったりするため、決算書、株主名簿、会計帳簿、株主総会資料などを十分に持っていないことがあります。

資料が手元にないからといって、少数株式の売却や買取交渉の相談ができないわけではありません。売却支援をご依頼いただく場合には、弁護士が必要・相当と判断する範囲で、会社への資料請求や株主としての権利行使を検討します。会計資料や株主構成の確認が必要な場合は、会計帳簿閲覧請求株主名簿閲覧請求が問題になることがあります。

売却支援を依頼した場合、資料請求や株主権行使のたびに追加費用がかかりますか。

少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉をご依頼いただく場合、弁護士が売却支援のために必要・相当と判断する資料請求や株主としての権利行使は、売却支援の一部として検討します。資料がないからといって、直ちに別途スポット依頼が必要になるわけではありません。

もっとも、裁判手続、鑑定、第三者専門家の費用、裁判所に納める費用などが必要になる場合には、事前に見積りや費用負担の要否を確認します。重要なのは、資料不足を理由に相談を諦めることではなく、どの資料が必要で、どの範囲を売却支援の中で行うかを整理することです。

会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求だけを依頼できますか。

依頼自体は可能です。ただし、会計帳簿閲覧請求や株主名簿閲覧請求だけで、少数株主の問題が解決するケースは多くありません。資料を取得しても、その後に会社や大株主との交渉、株式の売却、買取価格の協議などが必要になることが少なくないためです。

そのため、基本的には、少数株式の売却、株式譲渡、会社・大株主との買取交渉までを視野に入れて相談することをおすすめします。他方で、売却や買取交渉はご自身で対応したいという希望が強く、株主としての権利行使だけを依頼したい場合には、スポット案件として個別に見積もることがあります。

少数株主権行使だけを完全成功報酬制で依頼できますか。

原則として、少数株主権行使だけのスポット依頼には、完全成功報酬型や着手金を抑えた成功報酬型はなじみにくいといえます。完全成功報酬型は、主に売却代金という成果が見込まれる少数株式の売却・株式譲渡・買取交渉で検討される費用体系だからです。

会計帳簿閲覧請求、株主名簿閲覧請求、株主総会招集請求、株主提案権などの権利行使だけを依頼する場合、売却代金が発生するとは限りません。そのため、対応範囲、手続の難易度、会社側の対応、裁判所手続の要否などを踏まえ、スポット案件として個別に費用を見積もることになります。

裁判手続や売買価格決定申立てに進む場合、費用体系は変わりますか。

変わることがあります。任意交渉で売却できる見込みが高い案件と、裁判手続や売買価格決定申立てに進む案件では、必要な作業量が異なります。裁判手続では、会社資料の分析、株価評価、相手方主張への反論、裁判所への説明資料などが問題になるためです。

そのため、裁判手続に進む可能性が高い案件では、完全成功報酬制ではなく、着手金と成功報酬を組み合わせる方法、タイムチャージを併用する方法、段階ごとに費用体系を確認する方法などが適している場合があります。売買価格決定申立ての内容は、売買価格決定申立てで詳しく解説しています。

無料相談で費用体系と方針を確認する

少数株主の弁護士費用は、形式的な料金表だけで判断するよりも、実際の株式価値、売却見込み、相手方の対応、資料の有無、手続の見通しを確認したうえで検討することが重要です。特に、少数株式や非上場株式の売却では、会社や大株主との関係、過去の買取提案、配当の有無、株式割合、相続や親族関係の経緯などが交渉に影響します。

無料相談では、完全成功報酬制を検討できる案件か、着手金と成功報酬を組み合わせるべき案件か、タイムチャージやスポット依頼が適している案件かを整理できます。費用倒れを避けるためにも、最初の段階で、どの範囲を依頼するのか、どの成果を目指すのか、裁判手続や第三者費用の可能性があるのかを確認しておくことが大切です。

相談時に資料がそろっていなくても問題ありません。定款、株主名簿、決算書、株主総会資料、配当通知、会社や大株主とのやり取りなどがあれば相談がスムーズですが、手元にない資料については、売却支援の中で取得方法を検討することがあります。少数株主として何から始めればよいか分からない場合も、まずは状況を整理するところから始められます。

少数株主の無料相談については、少数株主の無料相談をご確認ください。

まとめ:少数株主の弁護士費用は、依頼内容と売却見込みに応じて確認しましょう

少数株主が保有する少数株式や非上場株式は、市場で簡単に売却できないことが多く、会社や大株主との交渉、株式価値の確認、資料取得、譲渡制限への対応などを整理しながら進める必要があります。そのため、弁護士費用も、依頼内容と売却見込みに応じて検討することが重要です。

  • 少数株主の弁護士費用は、株式価値、売却見込み、相手方の対応、資料の有無、手続見込みで変わります。
  • 少数株式の売却や買取交渉では、完全成功報酬制や着手金を抑えた成功報酬型を検討できる場合があります。
  • 完全成功報酬制は便利な費用体系ですが、適用条件、依頼範囲、対応範囲に限りがあります。
  • 資料がなくても相談でき、売却支援の中で必要・相当な資料請求や株主権行使を検討することがあります。
  • 売却支援を依頼せず、少数株主権行使だけをスポットで依頼する場合は、別の費用体系として個別に見積もります。

費用を抑えることだけを優先すると、必要な資料確認や交渉準備が不十分になることがあります。一方で、最初から重い手続を前提にしすぎると、費用倒れの不安が大きくなります。まずは、株式の価値、売却可能性、相手方との関係、手元資料の有無を整理し、どの費用体系が適しているかを確認しましょう。

坂尾陽弁護士

費用体系は、資料の有無や売却見込みを確認してから決めると、費用倒れを避けやすくなります。

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