非上場会社や同族会社の少数株式を持っていると、「この株式は本当に売れるのか」「会社や大株主に買い取ってもらえるのか」と悩むことがあります。とくに、相続で少数株式を取得したものの、経営に関与しておらず、配当も少ない場合には、できるだけ早く現金化したいと考える方も少なくありません。
少数株式の売却は、上場株式のように市場で簡単にできるものではありません。しかし、会社・経営者・大株主が任意に買い取る場合、第三者に譲渡できる場合、譲渡不承認により会社又は指定買取人の買取に進む場合、法律上又は契約上の買取請求権がある場合には、売却・換価できることがあります。
この記事では、非上場会社の少数株主が少数株式を売却できる典型的なパターン、売却が難しくなるケース、譲渡制限株式の手続、価格交渉の考え方を、弁護士の実務感覚を踏まえて整理します。
この記事の要点は、次のとおりです。
- 少数株式は一般的に売却が難しいものの、一定の成功パターンがあります。
- 最も一般的なのは、会社・経営者・大株主が任意に買い取るケースです。
- 第三者売却は、会社が譲渡を承認するかどうかで結論が分かれます。
- 高く売れやすい順番は、成功パターンの一般性とは別に考える必要があります。
- 会社側が無視する、株式価値が乏しい、買い手に資金がない場合は、打ち手を変える必要があります。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~ 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
少数株式・非上場株式の売却や支配株主とのトラブルは弁護士の無料相談へ
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少数株式は売却できるのか
少数株式は、会社の支配権を持たない株式であり、買い手から見ると、経営に関与しにくい、配当をコントロールできない、会社情報を十分に把握しにくいという弱点があります。そのため、一般的には売却が難しい株式です。
もっとも、少数株式だからといって、常に売却できないわけではありません。実務上は、誰が買うのか、会社が譲渡を承認するのか、任意交渉で進めるのか、法律上又は契約上の買取制度に乗せられるのかによって、売却可能性は大きく変わります。非上場株式売却の全体像については、非上場株式売却の全体像も参考になります。
少数株式は一般的に売却が難しいが、成功するパターンはある
少数株式が売りにくい理由は、株式そのものに価値がないからではありません。多くの場合、問題は「買い手が限られること」「売却価格の基準が分かりにくいこと」「譲渡制限により会社の承認が必要になること」にあります。
したがって、少数株式を売却できるかどうかは、単に「会社が買ってくれるか」だけで判断するべきではありません。会社・経営者・大株主との任意交渉、第三者買い手候補の探索、譲渡承認請求、不承認時の会社又は指定買取人による買取、契約書や法律上の買取請求権の有無を順番に確認する必要があります。
とくに親族会社・同族会社では、株主間の感情的な対立や、相続後の関係悪化によって交渉が止まっていることがあります。そのような場合でも、法的な手続と買い手候補を整理することで、話合いの入口を作れることがあります。
少数株式の売却が成功しやすい五つのパターン
少数株式の売却・換価が成功するパターンは、大きく次の五つに整理できます。本文全体では、この五つを軸にして、どのルートが現実的かを検討していきます。
- 会社・経営者・大株主が任意に買い取るケース
最も一般的で、まず検討すべきルートです。会社側に株主構成を整理したい、親族間の紛争を終わらせたい、少数株主対応の負担を減らしたいという動機があれば、任意交渉が進むことがあります。 - 第三者に売却できるケース
同業者、取引先、投資家、業界関係者などが買い手候補になる場合です。ただし、譲渡制限株式では、会社の承認を得られるかどうかが重要な分岐になります。 - 譲渡不承認により会社又は指定買取人の買取に進むケース
第三者への譲渡を会社が承認しない場合でも、譲渡承認請求の設計によっては、会社又は指定買取人による買取手続に進むことがあります。これは、譲渡制限株式の売却で非常に重要なルートです。 - 法律上の株式買取請求権が生じるケース
組織再編、事業譲渡、スクイーズアウト、反対株主の株式買取請求など、法律上の制度により買取が問題になるケースです。 - 契約上の買取請求権があるケース
株主間契約、投資契約、創業者間契約などに買取条項がある場合です。主にファンド、投資家、個人投資家、エンジェル投資家などが投資契約を締結している場面で問題になりやすく、親族会社の相続株主では該当しないことも多いです。
この五つの中では、会社・経営者・大株主への任意売却が最も一般的です。他方で、第三者売却と譲渡不承認時の買取は、会社が譲渡を承認するかどうかで分かれる表裏のルートです。
高く売れやすい順番は成功パターンの順番とは異なる
売却が成功しやすい順番と、高く売れやすい順番は同じではありません。一般的な成功可能性としては、会社・経営者・大株主への任意買取が最初に検討されます。しかし、価格面では、法律上又は契約上の権利に基づく場面の方が、単なる任意交渉より有利に進むことがあります。
実務上の感覚としては、価格面では次の順番を一つの目安として考えます。
- 法律上の枠組みに乗るケース
譲渡不承認時の会社・指定買取人による買取や、反対株主の株式買取請求などでは、手続と価格決定の枠組みがあるため、少数株式であっても単なる任意交渉より高額で売却できます。 - 契約上の買取請求権を行使できるケース
契約上の買取義務や価格算定条項があれば、交渉の出発点が明確になります。契約内容次第ですが一般的に任意交渉よりも高額で売却できる傾向があります。ただし、条項の内容、発動要件、通知期限によって結論は大きく変わります。 - 会社・経営者・大株主が任意で買い取るケース
会社側に株主構成の整理や紛争予防の動機がある場合、少数株式を多少割り引いた価格であっても売却できることがあります。 - 第三者に売却するケース
第三者は、少数株式であること、譲渡承認が必要であること、会社情報を入手しにくいことなどのリスクを価格に織り込みやすいため、売却価格が下がりやすい傾向があります。 - 買取業者に売却するケース
早期現金化の選択肢にはなりますが、買取業者側が手続コストや転売リスクを織り込むため、低い価格提示になりやすい点に注意が必要です。
会社の業績、純資産、成長性、持株比率、買い手の目的、支配権への影響によっては、第三者売却の方が高くなることもあります。とくにベンチャー企業や成長会社では、将来性を評価する買い手が現れる場合があります。
市場がないことと譲渡制限が売却を難しくしている
少数株式の売却が難しいといわれる大きな理由は、市場がないことです。上場株式であれば、証券市場で価格が形成され、売却先を個別に探す必要はありません。しかし、非上場会社の株式には通常そのような市場がなく、誰に売るか、いくらで売るかを個別に交渉しなければなりません。
さらに、同族会社や中小企業の株式には、定款で譲渡制限が付いていることが多くあります。譲渡制限株式を第三者に売却するには、会社の承認が必要になるため、買い手候補が見つかっても、会社が承認するかどうかという問題が残ります。
ただし、譲渡制限があるからといって、売却が不可能になるわけではありません。むしろ、会社が承認しない場合には、一定の手続を通じて会社又は指定買取人による買取に進むことがあります。この点を理解しているかどうかで、少数株式の売却戦略は大きく変わります。
会社・経営者・大株主に任意で買い取ってもらう方法
少数株式の売却で最初に検討するべきなのは、会社、経営者、大株主、親族株主など、会社側に近い人へ任意に買い取ってもらう方法です。第三者にとっては扱いにくい少数株式でも、会社側にとっては、株主構成を整理できる、将来の紛争を予防できる、相続後の株主関係を安定させられるという意味があります。
会社・大株主への売却を詳しく検討する場合は、会社・大株主に株式を買い取ってもらう方法も参考になります。
会社側に買い取る動機があるかを確認する
任意買取が進むかどうかは、会社側に買い取る動機があるかによって大きく変わります。たとえば、少数株主との関係が悪化している、株主総会や資料請求への対応が負担になっている、相続により親族外の株主が増えた、将来の事業承継やM&Aに備えて株主構成を整理したい、といった事情がある場合には、会社側も買取を検討しやすくなります。
反対に、会社側が少数株主の存在をあまり気にしておらず、買取資金も乏しい場合には、「買い取ってください」と申し入れるだけでは交渉が進みにくいことがあります。その場合は、価格の根拠、譲渡制限の手続、第三者買い手候補の有無、今後の株主権行使の可能性などを整理して、交渉の入口を作る必要があります。
任意交渉では価格だけでなく支払条件も重要になる
任意買取では、価格だけを見て判断すると、後でトラブルになることがあります。会社や経営者が買い取る場合、支払時期、一括払いか分割払いか、譲渡承認の手続、株主名簿の書換え、秘密保持、今後会社や親族に対してどのような請求をしないかといった条件も重要です。
とくに同族会社では、株式売却の話し合いが親族間の感情的対立と結びつきやすいです。そのため、条件を曖昧にしたまま「とりあえず代金を受け取る」という形にすると、後から株式数、名義、支払残額、税務処理、関連する相続問題で紛争が残る可能性があります。
任意交渉では、売買契約書を作成し、株式数、代金、支払日、名義書換え、譲渡承認、表明保証、秘密保持、紛争解決条項などを整理することが重要です。
会社に資金がない場合は別ルートを検討する
会社・経営者・大株主が最も自然な買い手候補であっても、実際に買取資金がなければ、任意売却は進みにくくなります。会社が自己株式を取得する場合には、会社法上の財源規制も問題になります。経営者個人や大株主が買い取る場合でも、個人資金で支払えるかどうかが現実的な制約になります。
このような場合には、分割払いを検討する、代表者や親族株主が共同で買い取る、関連会社や後継者に売却する、第三者の買い手候補を探すなど、別ルートを検討する必要があります。ただし、分割払いは未払いリスクを伴うため、期限の利益喪失条項、担保、連帯保証、株式移転のタイミングなどを慎重に設計する必要があります。
会社側に資金がないからといって、直ちに売却を諦める必要はありません。しかし、その場合は、会社側だけに交渉先を限定せず、第三者売却や譲渡承認請求も含めて、複数の選択肢を比較することが重要です。
第三者に売却できるケースと譲渡承認の分岐
会社・経営者・大株主との任意交渉が進まない場合、第三者に売却できないかを検討します。第三者売却は、会社側が買い取らない場合の重要な選択肢です。ただし、非上場会社の少数株式では、買い手候補を見つけること自体が難しく、譲渡制限株式であれば会社の承認も必要になります。
非上場株式を売りたい場合の初動を整理したい場合は、非上場株式を売りたい場合の初動も参考になります。
第三者売却では買い手候補の探索が重要になる
第三者売却で最も難しいのは、買い手候補の探索です。少数株式を取得しても、通常は会社を支配できず、配当や情報開示も限定的です。そのため、一般の投資家が高い価格で買うとは限りません。
それでも、会社の事業に関心を持つ同業者、取引先、業界関係者、将来の事業提携を考える投資家、会社との関係性を持つ親族・関係者などが、買い手候補になることがあります。買い手候補が会社の将来性、技術、許認可、顧客基盤、取引関係に価値を見いだす場合には、単なる配当目的の少数株式よりも高い評価につながる可能性があります。
もっとも、第三者は、会社情報を十分に確認できないリスク、会社に譲渡を承認してもらえないリスク、少数株主としての権利行使に限界があるリスクを考慮します。そのため、第三者売却では、会社側への売却より価格が低くなりやすいことを前提に、買い手候補の目的とリスク許容度を見極める必要があります。
会社が譲渡を承認すれば第三者に売却できる
譲渡制限がある株式でも、会社が譲渡を承認すれば、第三者に売却できます。したがって、第三者買い手候補が見つかった場合は、その候補者に売却することを前提に、会社へ譲渡承認請求を行うことになります。
会社が譲渡を承認するかどうかは、買い手候補の属性、会社との関係、競業性、株主構成への影響、会社の今後の経営方針などによって変わります。会社側から見ると、見知らぬ第三者が株主になることを嫌がる場合もあります。他方で、会社側が自ら買い取る資金を持っていない場合や、買い手候補との関係が悪くない場合には、承認される可能性もあります。
第三者売却を検討する場合は、買い手候補の名前を出すタイミング、譲渡価格、譲渡承認請求書の内容、会社側への説明方法を慎重に設計する必要があります。
会社が承認しない場合は会社又は指定買取人の買取に進むことがある
第三者への譲渡を会社が承認しない場合でも、そこで終わりとは限りません。譲渡承認請求の際に、会社が承認しない場合には会社又は指定買取人が買い取ることを求める設計をしていれば、会社側の不承認をきっかけに、買取手続へ進むことがあります。
この点は、少数株式の売却で非常に重要です。会社側が「その第三者には売ってほしくない」と考えるのであれば、会社側としては、単に拒否するだけではなく、会社又は指定買取人による買取を検討しなければならない場面があります。
ただし、単なる口頭での相談、曖昧な売却申入れ、譲受人や株式数が特定されていない申入れでは、期待した手続に進まないことがあります。第三者売却を入口にして会社又は指定買取人の買取を狙う場合には、譲渡承認請求の設計が重要です。
譲渡制限株式で会社又は指定買取人の買取に進む方法
非上場会社の少数株式では、定款に譲渡制限が置かれていることが多くあります。譲渡制限株式は、第三者への譲渡について会社の承認が必要とされる株式です。会社が承認すれば第三者売却に進みますが、会社が承認しない場合には、会社又は指定買取人による買取が問題になります。
譲渡制限株式の手続をより詳しく確認したい場合は、譲渡制限株式の買取請求も参考になります。条文の確認には、会社法も参照できます。
まず定款・株主名簿・株券発行の有無を確認する
譲渡承認請求を検討する前に、まず定款を確認し、株式に譲渡制限があるか、承認機関が株主総会なのか取締役会なのか、どのような手続が定められているかを把握する必要があります。定款を確認しないまま売却交渉を始めると、承認機関や手続を誤り、会社側から形式不備を指摘される可能性があります。
次に、株主名簿上の名義を確認します。相続で株式を取得した場合、実際には相続人が株式を承継していても、株主名簿上は被相続人名義のままになっていることがあります。この場合、誰が譲渡承認請求を行うべきか、名義書換えを先に行うべきかを整理する必要があります。
また、古い会社では、株券発行会社であるにもかかわらず、株券の所在が不明になっていることがあります。株券発行会社かどうか、株券が発行されているか、株券を保管しているかも、売却手続に影響します。
譲渡承認請求では不承認時の買取を求める設計が重要
譲渡制限株式を売却する場合、株主は会社に対して、譲渡を承認するかどうかの決定を請求できます。このとき、単に「株式を売りたい」と伝えるだけでは不十分です。譲渡しようとする株式の種類と数、譲受人、承認を求める内容を明確にする必要があります。
さらに重要なのは、会社が譲渡を承認しない場合に、会社又は指定買取人による買取を求める旨を明らかにすることです。この設計をしておくことで、会社が不承認とした場合に、買取手続へ進む可能性が生じます。
つまり、譲渡承認請求は、単なる第三者売却の承認申請ではありません。会社が承認する場合は第三者売却に進み、会社が承認しない場合は会社又は指定買取人による買取に進むという、二つのルートを見据えた手続です。
会社が不承認にすれば必ず有利になる、という意味ではありません。譲受人、株式数、不承認時の買取請求、通知期間などを適切に設計しておく必要があります。
会社が承認しない場合は会社又は指定買取人による買取に進む
会社が譲渡を承認しない場合、会社が自ら買い取るか、指定買取人を指定して買い取らせることが問題になります。会社が自ら買い取る場合には、自己株式取得に関する手続や財源規制も関係します。指定買取人を立てる場合には、その指定買取人が誰で、どのような資金で買い取るのかが重要です。
この場面では、会社側が適法に不承認の決定をし、会社又は指定買取人による買取通知を行い、必要な供託を行うなど、法定の流れに沿って手続を進める必要があります。株主側としては、会社からの通知日、通知内容、供託の有無、価格協議の期限を確認しなければなりません。
少数株主にとって重要なのは、会社が譲渡を認めない場合でも、会社側が何も負担せずに単に拒否できるとは限らないという点です。もっとも、これは法定手続に乗った場合の話であり、日常的な会話で「売りたい」と伝えたところ断られた、というだけで当然に買取義務が生じるわけではありません。
価格で合意できない場合は売買価格決定申立てを検討する
会社又は指定買取人による買取に進んでも、価格で合意できるとは限りません。会社側が低い金額を提示し、株主側が納得できない場合には、協議で価格を決めることが難しくなります。
このような場合には、会社法上の売買価格決定申立てを検討することがあります。裁判所は、会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を定めます。価格評価では、配当還元法、DCF法、純資産法、収益還元法などが問題になり、会社の実態、株主の立場、譲受人の立場によって判断が変わります。
ただし、裁判所に申し立てれば必ず高額になるわけではありません。非上場会社の株式には市場性がないことを理由とする減価が問題になる場合もあります。価格の考え方は後ほど詳しく整理しますが、譲渡承認請求を行う段階から、価格資料や決算書を準備しておくことが重要です。
会社が通知しない場合はみなし承認にも注意する
会社が譲渡承認請求を受けたにもかかわらず、一定期間内に承認するかどうかを通知しない場合には、譲渡を承認したものとみなされる場面があります。会社が完全に無視している場合でも、直ちに「買取に進む」と考えるのではなく、みなし承認の有無を確認する必要があります。
この点は、少数株主にとって見落としやすいところです。会社から返事がない場合、感情的には「拒否された」と受け止めがちですが、法的には、通知期間、請求書の到達日、定款の定め、会社側の通知内容によって結論が変わります。
そのため、会社が返答しない場合には、やり取りを証拠化し、請求書の内容と到達日を確認したうえで、次に第三者売却を進めるのか、会社側との交渉を続けるのか、価格決定や株主権行使を検討するのかを整理することが大切です。
坂尾陽弁護士
法律上・契約上の買取請求権があるケース
少数株式の売却では、会社・経営者・大株主との任意交渉、第三者への売却、譲渡不承認時の会社又は指定買取人による買取が中心になります。もっとも、場面によっては、法律上又は契約上の買取請求権が問題になることもあります。
ただし、ここでいう法律上・契約上の買取請求権は、すべての少数株主がいつでも使える制度ではありません。親族会社・同族会社の株式を相続した方が「今すぐ会社に買い取ってほしい」と考えている場面とは、やや異なるケースもあります。
そのため、本記事では、法律上・契約上の買取請求権を「該当する場合には強い選択肢になり得るが、通常の少数株式売却とは場面が異なることが多いルート」として整理します。
法律上の株式買取請求権が生じるケース
法律上の株式買取請求権が問題になる代表的な場面は、会社が組織再編や株式集約を行う場合です。たとえば、合併、会社分割、事業譲渡、株式併合、スクイーズアウトなどが行われ、これに反対する株主に株式買取請求権が認められることがあります。
この場合、少数株主が自分から「会社に株式を売りたい」と申し入れる通常の売却交渉とは異なり、会社側の組織再編や株式整理をきっかけとして、法律上の買取制度が動くことになります。法律上の買取制度に乗ることができれば、単なる任意交渉よりも、手続や価格決定の枠組みが明確になりやすいという特徴があります。
もっとも、反対株主の買取請求には、対象となる会社行為、反対意思の表示、請求期限、請求方法などの要件があります。該当しない場面で「反対株主として買い取ってもらえる」と考えると、手続を誤るおそれがあります。反対株主の株式買取請求やスクイーズアウトの詳しい整理は、反対株主・スクイーズアウトの株式買取請求で確認するのが有用です。
契約上の買取請求権があるケース
契約上の買取請求権が問題になるのは、株主間契約、投資契約、創業者間契約などに、一定の場合に株式を買い取る旨の条項がある場合です。たとえば、役員退任、競業、契約違反、上場・M&Aの不成立、一定期間の経過などをきっかけに、会社、創業者、大株主、他の投資家などに株式を買い取らせる条項が定められていることがあります。
ただし、このルートは、親族会社・同族会社の株式を相続で取得した少数株主よりも、ファンド、投資家、個人投資家、エンジェル投資家などが投資契約を締結している場面で問題になりやすいものです。一般的な同族会社の少数株主では、そもそも株主間契約や投資契約が存在しないことも少なくありません。
契約上の買取請求権がある場合は、任意交渉よりも強い根拠になります。一方で、条項の文言、発動要件、通知方法、価格算定方法、支払期限、違約金の有無によって結論が大きく変わります。契約書に買取条項がある場合の詳しい考え方は、契約に基づく株式買取請求で整理しています。
権利がありそうな場合は期限・通知・価格算定条項を確認する
法律上又は契約上の買取請求権がありそうな場合には、「権利があるかもしれない」と考えるだけでなく、具体的な要件を早めに確認する必要があります。とくに、期限を過ぎると権利行使が難しくなることがあります。
最初に確認すべき資料は、会社から届いた組織再編や株式併合に関する通知、株主総会招集通知、定款、株主間契約、投資契約、創業者間契約、過去の合意書などです。契約書がある場合は、条項名だけでなく、どのような場合に誰に対して請求できるのか、価格はどのように決まるのかまで確認します。
- 発生原因:組織再編、株式併合、役員退任、契約違反など、どの事実で権利が生じるのかを確認します。
- 請求期限:反対通知や買取請求の期限、契約上の通知期限を確認します。
- 通知先と方法:会社、代表者、大株主、契約相手方の誰に、どの方法で通知する必要があるかを確認します。
- 価格算定:公正な価格、純資産価額、契約で定めた算式、第三者評価など、価格の決め方を確認します。
これらを確認しないまま交渉を始めると、権利行使の期限を逃したり、相手方から「要件を満たしていない」と反論されたりするおそれがあります。法律上・契約上の買取請求権がありそうな場合は、通常の売却交渉よりも、初動の確認が重要になります。
少数株式・非上場株式の売却や支配株主とのトラブルは弁護士の無料相談へ
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売却価格・買取価格で揉めたときの考え方
少数株式の売却では、「いくらで売れるのか」という価格の問題が避けられません。会社や大株主が買い取る意思を示しても、提示額が極端に低いことがあります。反対に、株主側が高い価格を希望しても、買い手がその金額では応じないこともあります。
非上場会社の少数株式には市場価格がありません。そのため、価格交渉では、会社の決算内容、純資産、収益力、配当実績、持株比率、譲受人の立場、支配権への影響などを踏まえて、どの評価方法を用いるかが問題になります。
会社側の提示額がそのまま適正価格とは限らない
会社側から「少数株式には価値がない」「配当もないので額面程度で十分」と言われたとしても、その提示額が当然に適正価格になるわけではありません。非上場株式であっても、会社に純資産や収益力があり、将来の配当可能性や事業価値がある場合には、一定の株式価値が認められることがあります。
とくに同族会社では、役員報酬、親族への支出、内部留保、配当政策などによって、少数株主から見た経済的価値が分かりにくくなっていることがあります。会社側の提示額を検討するときは、単に「会社がそう言っているから」と受け入れるのではなく、決算書、計算書類、配当資料、過去の取引事例、会社とのやり取りを確認することが大切です。
少数株式の価格評価については、少数株式の売却価格・評価方法で詳しく整理しています。本記事では、売却交渉の入口として、価格の考え方を押さえておきます。
評価方法は会社の状況や株主の地位で変わる
非上場株式の評価方法には、配当還元法、DCF法、純資産法、収益還元法などがあります。どれか一つの方法だけで必ず価格が決まるわけではなく、会社の実態や、株式を売る人・買う人の立場によって、重視される方法が変わります。
たとえば、東京地裁平成26年9月26日決定では、配当還元法、DCF法、純資産法を組み合わせて価格を判断しています。このような裁判例は、少数株式の評価方法が一つに固定されているわけではないことを示しています。
また、東京高裁平成20年4月4日決定では、譲渡人が発行済株式総数の四割を保有し、株主総会の特別決議を拒否できる立場にあること、株式の移転により譲受人が会社を完全に支配できることなどが重視されています。少数株式といっても、持株比率や支配権への影響によって、評価が変わることがあります。
一方、大阪地裁平成27年7月16日決定のように、非支配株主間の売買では、配当還元法が重視される場面もあります。つまり、「少数株式だから必ず高い」「少数株式だから必ず安い」と単純にはいえません。
最高裁令和5年5月24日決定から分かる注意点
譲渡制限株式の売買価格決定では、最高裁令和5年5月24日第三小法廷決定も重要です。同決定は、会社法144条2項に基づく売買価格決定手続において、DCF法によって算定された評価額から、非上場会社の株式に市場性がないことを理由とする非流動性ディスカウントを行うことができる場合があると判断しました。
もっとも、評価額の算定過程で、すでに市場性がないことが十分に考慮されている場合に、さらに非流動性ディスカウントを行うと、二重に減価することになり相当ではないとされています。この点は、価格交渉や売買価格決定申立てを考える際に重要です。
この裁判例から分かるのは、裁判所の手続に進めば必ず高額になるわけではないということです。非上場株式であること、少数株式であること、評価方法、会社の実態、当事者の立場を踏まえて価格が判断されます。価格で合意できない場合の手続は、売買価格決定申立ての問題として整理する必要があります。
少数株式の売却が失敗しやすいケースと解決策
少数株式は、成功パターンに当てはまる場合には売却・換価できる可能性があります。しかし、実際の相談では、会社側が無視する、買い手が見つからない、株式価値が乏しい、会社側に資金がないなどの事情により、売却が難航することもあります。
重要なのは、失敗しやすい理由を把握したうえで、打ち手を変えることです。任意買取が難しいなら第三者売却を検討する、会社が無視するなら書面や株主権行使で窓口を作る、価格が低いなら評価資料を確認する、といった形で、場面ごとに対応を整理します。
会社側が完全に無視するケース
会社、経営者、大株主が完全に無視する態度を取る場合、任意に買い取ってもらうことは難しくなります。電話や口頭で申し入れても返答がない、書面を送っても回答がない、株主総会や配当の情報も届かないというケースでは、通常の話合いだけで進めるのは限界があります。
この場合、まずはやり取りを証拠化し、書面で要求内容を明確にすることが重要です。そのうえで、株主名簿、計算書類、会計帳簿などの資料確認や、株主としての権利行使を通じて、会社側との対話の窓口を作ることを検討します。
また、会社側が任意買取に応じない場合でも、第三者の買い手候補を探し、譲渡承認請求を行うルートがあります。会社が承認しない場合には、会社又は指定買取人による買取手続に進む可能性もあります。無視されているからといって、直ちに売却をあきらめる必要はありません。
株式自体の経済価値が乏しいケース
対象会社が赤字、債務超過、事業停止に近い状態、配当実績なし、将来の収益見込みも乏しい場合には、株式自体の経済価値が低いと判断されることがあります。この場合、会社や大株主だけでなく、第三者にとっても買うメリットが少ないため、売却は難しくなります。
もっとも、「赤字だから必ず売れない」とも限りません。ベンチャー企業のように成長性がある場合、技術、許認可、取引先、知的財産、将来の資金調達可能性などが評価されることがあります。また、短期的には赤字でも、保有資産や事業価値がある会社では、別の評価が成り立つこともあります。
このケースでは、まず会社の決算書や事業状況を確認し、本当に価値が乏しいのか、どの点に価値を見出せるのかを整理する必要があります。単に「配当がない」「会社側が価値はないと言っている」というだけで判断しないことが大切です。
会社・経営者・大株主に資金がないケース
少数株式の最も自然な買い手候補は、会社、経営者、大株主です。しかし、会社に分配可能額がない、経営者や大株主に現金がない、金融機関から資金調達できないといった事情がある場合、任意買取は進みにくくなります。
会社が自己株式を取得する場合には、会社法上の財源規制も問題になります。会社が買いたいと考えていても、会社に十分な財源がなければ、自己株式取得として実行できないことがあります。
このような場合には、一括払いにこだわらず、分割払い、代表者個人による買取、親族・関連会社による買取、第三者買い手候補への売却などを検討します。ただし、分割払いでは回収リスクが生じるため、支払期限、期限の利益喪失、担保、連帯保証、契約解除条項などを慎重に設計する必要があります。
譲渡制限と買い手不在が重なるケース
買い手候補が見つからず、さらに定款で譲渡制限がある場合、売却は特に難しくなります。少数株式を買う第三者は、会社情報を十分に入手できないこと、経営に関与しにくいこと、配当をコントロールできないこと、会社が譲渡を承認しない可能性があることをリスクとして見ます。
この場合、会社・経営者・大株主に任意買取を打診するだけでなく、どのような第三者であれば買う合理性があるかを検討します。同業者、取引先、既存株主、親族、会社と関係のある事業者など、買い手候補の範囲を広げて整理することが重要です。
それでも買い手候補が見つからない場合には、会社側との交渉を続けるための資料収集や株主権行使、将来の組織再編・株式集約の可能性、配当政策の見直しなども含めて、長期的な対応を検討することになります。非上場株式が売れない場合の進め方は、非上場株式が売れない場合の対処法でも整理しています。
低額提示や買取業者への早期売却で条件を悪化させるケース
会社側から極端に低い価格を提示されたり、買取業者から早期現金化を提案されたりすると、「これ以上は売れないのではないか」と考えて、急いで売却してしまうことがあります。しかし、十分な資料確認や比較をしないまま売却すると、後から条件が不利だったと分かることがあります。
買取業者は、少数株式のリスク、譲渡承認のリスク、会社情報を入手しにくいリスク、将来の転売・回収リスクを価格に織り込むことがあります。そのため、買取業者への売却は選択肢の一つではありますが、最初から唯一の選択肢として扱うのは慎重であるべきです。
会社・大株主との交渉余地、第三者売却の可能性、譲渡承認請求、不承認時の買取、価格評価を比較したうえで、買取業者の提示額が妥当かどうかを判断します。買取業者を利用する場合の注意点は、非上場株式の買取業者を利用する場合の注意点で確認できます。
会社側に不透明な支出や手続不備がある場合
同族会社や親族会社では、会社側の不透明な支出、過大な役員報酬、親族への利益移転、配当不払い、株主総会や計算書類の手続不備などが問題になることがあります。少数株主としては、「会社側に問題があるなら、それを理由に株式を買い取らせられるのではないか」と考えるかもしれません。
しかし、会社側に不透明な支出や手続不備があっても、それ自体が直ちに少数株主に対する株式買取義務を発生させるわけではありません。少数株式を売却したい場面では、不正追及そのものよりも、買い手候補の探索、会社・大株主との買取交渉、譲渡承認請求、価格交渉をどのように組み合わせるかが重要です。
不透明な会計は価格交渉や資料収集の問題として整理する
不透明な支出、過大な役員報酬、親族への支払い、配当不払いなどは、会社価値や株価評価を検討するうえで重要な資料になることがあります。たとえば、会社が利益を出しているにもかかわらず配当をしていない場合、役員報酬や内部留保の状況を確認する必要があります。
もっとも、これらの事情は「会社に問題があるから株式を高く買い取れ」と直ちに結論づけるためのものではありません。価格交渉では、会社の実態を把握し、適正な価格を検討するための材料として整理することが重要です。
会社が資料を出さない場合には、株主名簿閲覧請求、計算書類の確認、会計帳簿閲覧請求などを検討します。株式売却や株価評価のために資料を集める方法は、会計帳簿閲覧請求でも詳しく解説しています。
株主代表訴訟は株式を売却する手段ではない
会社側の不正支出や役員の責任が疑われる場合、株主代表訴訟が問題になることがあります。株主代表訴訟は、役員等の責任を追及し、会社に損害を回復させるための制度です。
ただし、株主代表訴訟で回復される損害は、原則として会社に帰属します。少数株主個人が売却代金として直接受け取る制度ではありません。そのため、株主代表訴訟を提起すれば、会社や大株主に株式を買い取らせられると考えるのは適切ではありません。
もちろん、会社側の不正や手続不備が、会社価値、役員責任、配当政策、少数株主との関係整理に影響することはあります。しかし、少数株式の売却を実現するうえでは、代表訴訟を中心に据えるよりも、会社側との対話の窓口を作ること、第三者買い手候補を探すこと、譲渡承認請求や価格交渉を適切に進めることの方が実務上は重要になりやすいです。
会社側の不透明な支出や手続不備がある場合も、「不正追及」と「株式売却」を混同しないことが大切です。資料収集によって会社の実態を把握し、その情報を価格交渉や売却ルートの検討に活かすという位置づけで整理すると、現実的な解決策を見つけやすくなります。
少数株式の売却を弁護士に依頼するメリット
少数株式の売却は、単に「会社に買い取ってください」と伝えれば進むものではありません。会社側が返答しない、低い価格しか提示しない、第三者への譲渡を認めない、資料を出さないといった事情が重なると、株主本人だけでは次の打ち手を判断しにくくなります。
弁護士に依頼するメリットは、相手に強い言葉を送ることだけではありません。会社側との対話の窓口を作ること、第三者の買い手候補を検討すること、譲渡承認請求や価格交渉を手続に沿って進めること、買取業者の提示額と他の選択肢を比較することにあります。
特に親族会社・同族会社では、過去の相続、親族間の感情対立、役員報酬や配当への不満が絡み、話合いが止まっていることがあります。そのような場合でも、弁護士が代理人として入ることで、感情的な対立を条件交渉に戻せる場合があります。
会社側との対話の窓口を作りやすくなる
少数株式の売却で最初に問題になるのは、会社・経営者・大株主が話合いに応じるかどうかです。会社側が完全に無視する態度を取る場合、任意の買取交渉は進みにくく、第三者売却や譲渡承認請求の準備も難しくなります。
弁護士が入ると、会社側に対して、保有株式数、譲渡希望、資料開示の必要性、譲渡承認請求の可能性、価格協議の論点を整理して伝えられます。会社側も、本人同士の感情的なやり取りではなく、法的手続や今後の紛争リスクを踏まえて対応を検討しやすくなります。
もちろん、弁護士が通知すれば必ず会社側が買い取るわけではありません。しかし、完全に返答がない状態から、会社側の窓口を確認し、任意交渉、資料確認、譲渡承認請求、第三者売却のどのルートを取るかを整理するきっかけになることがあります。
相手方にも弁護士が立ち、任意交渉が進むことがある
親族会社・同族会社の少数株式では、本人同士で話すほど感情的になり、買取交渉が進まないことがあります。過去の相続、経営方針、配当、役員報酬、親族間の不信感が背景にあると、会社側が「話したくない」「価値はない」といった態度を取ることもあります。
株主側が弁護士を立てると、相手方にも弁護士が就くことがあります。相手方弁護士が入ることで、会社側も、譲渡承認、自己株式取得の財源、支払条件、価格評価、秘密保持、今後の関係整理を法的に検討しやすくなります。
この場合、交渉の目的は相手を責めることではありません。株式を誰が取得するのか、価格をどのように決めるのか、一括払いか分割払いか、譲渡承認をどのように行うのか、今後会社や親族との関係をどう整理するのかを、条件として詰めていくことが中心になります。
本人同士では止まっていた話合いでも、弁護士同士であれば、感情的な対立を抑え、現実的な解決条件に落とし込める場合があります。これは、少数株式の売却で弁護士に依頼する重要なメリットの一つです。
第三者買い手候補を検討しやすくなる
少数株式の売却では、会社・経営者・大株主が買い取ってくれない場合に、第三者の買い手候補を探せるかが重要になります。もっとも、少数株式は支配権を伴わないことが多く、会社情報も十分に開示されていないため、一般の買い手が簡単に見つかるわけではありません。
弁護士に依頼すると、会社法上の手続や株主間の関係を整理したうえで、少数株式の買い手候補を検討しやすくなります。事案によっては、弁護士の過去の経験、専門家ネットワーク、M&A仲介会社、業界関係者、投資家、同業他社との接点を踏まえて、第三者売却の可能性を検討することがあります。
ここで重要なのは、会社全体を売却するM&Aとは違い、「少数株式の買い手候補探索」として現実的に考えることです。買い手候補は、会社の事業内容、株主構成、取得後に期待できる権利、譲渡承認の見通し、価格水準を見て判断します。そのため、第三者候補を探す場合でも、価格資料や譲渡承認の手続を同時に整理しておく必要があります。
手続・価格・契約・買取業者比較を一体で整理できる
少数株式の売却では、複数の論点が同時に問題になります。会社に任意で買い取ってもらうのか、第三者に売却するのか、譲渡承認請求を行うのか、法律上又は契約上の買取請求権があるのか、買取業者の提示を受けるべきかを、個別にではなく全体として整理する必要があります。
たとえば、会社側から低い価格を提示された場合でも、すぐに拒否するのではなく、決算書、純資産、収益力、配当状況、持株比率、譲受人の立場を踏まえて、交渉余地があるかを検討します。第三者候補がいる場合には、譲渡承認が得られるか、不承認時に会社又は指定買取人の買取に進めるかも重要です。
また、株主間契約や投資契約がある場合には、契約上の買取条項、通知期限、価格算定方法を確認する必要があります。買取業者から提示を受けている場合には、その提示額が、会社・大株主との交渉や第三者売却と比べて合理的かを比較します。
このように、少数株式の売却では、一つの手段だけを見ると判断を誤ることがあります。弁護士に相談することで、手続、価格、契約、買い手候補を一体で整理し、安易な低額売却を避けやすくなります。
解決事例を参考に売却の進め方を具体化できる
少数株式の売却では、「本当に売れた事例があるのか」「会社側が応じない場合にどう進むのか」という不安を感じる方が少なくありません。実際には、会社・大株主との任意交渉で解決するケースもあれば、第三者候補の検討や譲渡承認請求を通じて売却可能性を広げるケースもあります。
解決事例を見ると、どのような資料を準備し、どのように会社側と交渉し、どの段階で弁護士が関与したのかをイメージしやすくなります。少数株式の売却事例については、少数株式を売却できた解決事例でも紹介しています。
もっとも、事例はあくまで参考です。会社の業績、株主構成、持株比率、相手方の資金力、譲渡制限、契約条項、過去の交渉経緯によって、取るべき方針は変わります。自分のケースでどの成功パターンに近いのか、逆にどの失敗パターンに注意すべきかを整理することが大切です。
相談前に準備しておく資料
少数株式の売却を相談するときは、最初からすべての資料がそろっていなくても構いません。ただし、定款、株式数、会社の財務資料、会社側とのやり取りが分かる資料があると、売却ルート、譲渡制限の有無、価格交渉の見通しを整理しやすくなります。
特に親族会社・同族会社では、口頭でのやり取りや過去の経緯が複雑になりがちです。相談前には、事実関係を思い出すだけでなく、書面、メール、メッセージ、決算資料など、後から確認できる資料をできる範囲で集めておくことが大切です。
- 定款:譲渡制限の有無、承認機関、株券発行会社かどうかを確認するために重要です。
- 株主名簿・保有株式数が分かる資料:誰が何株を持っているか、議決権割合がどの程度かを確認します。
- 決算書・計算書類・事業報告:会社の純資産、収益力、配当可能性、役員報酬などを検討する基礎資料になります。
- 配当資料・株主総会資料:過去の配当状況、利益処分、会社側の説明内容を確認するために役立ちます。
- 会社・大株主とのやり取り:買取の申入れ、低額提示、返答拒否、譲渡承認に関する発言などを時系列で整理します。
- 株主間契約・投資契約・創業者間契約:一定の場合に株式を買い取ってもらえる条項がないかを確認します。
- 相続関係資料:相続で少数株式を取得した場合は、遺産分割協議書、戸籍、相続税申告資料などを確認します。
資料が手元にない場合でも、相談を先送りする必要はありません。会社に資料の開示を求める余地があるか、株主名簿閲覧請求や会計帳簿閲覧請求を検討すべきか、まずは手元資料から判断できる範囲を整理します。詳しくは少数株主の法律相談をご覧ください。
また、買取業者から提示を受けている場合や、会社・大株主から金額を示されている場合は、その提示書面やメールも重要です。提示額そのものだけでなく、支払時期、譲渡承認、秘密保持、今後の関係整理、費用負担などの条件も確認する必要があります。
相談時には、株式をできるだけ高く売りたいのか、親族会社との関係を早く整理したいのか、買取業者に売る前に比較したいのかという希望も整理しておくと、交渉方針を決めやすくなります。少数株式の売却では、法的手続だけでなく、相手方の姿勢、買い手候補、価格評価、時間軸を組み合わせて考えることが重要です。
まとめ
少数株式は、上場株式のように市場で簡単に売れるものではありません。特に非上場会社や同族会社では、買い手候補が限られ、譲渡制限、価格評価、親族間の感情的対立が重なり、本人だけで交渉しても話が進まないことがあります。
もっとも、少数株式は売却できないと決まっているわけではありません。会社・経営者・大株主が任意に買い取るケース、第三者に売却できるケース、譲渡不承認により会社又は指定買取人の買取に進むケース、法律上又は契約上の買取請求権があるケースなど、状況に応じて検討できるルートがあります。
- 少数株式の売却では、まず5つの成功パターンのどれに近いかを整理します。
- 会社・経営者・大株主の任意買取は最も一般的ですが、資金力や交渉姿勢が重要です。
- 第三者売却では、買い手候補の探索と譲渡承認の見通しを同時に確認します。
- 譲渡不承認時の買取や価格決定では、請求書の設計、通知、期限、価格資料が重要です。
- 会社側の無視、株式価値の乏しさ、資金不足がある場合は、解決策を切り替える必要があります。
価格面では、法律上の枠組みに乗るケースや契約上の買取請求権があるケースの方が、単なる任意交渉よりも有利になることがあります。一方で、親族会社・同族会社の少数株主にとって最も現実的なのは、会社・経営者・大株主との任意交渉や、第三者売却、譲渡承認請求を組み合わせて進めることです。
会社や大株主に無視されている場合、低い金額を提示されている場合、買取業者に売るべきか迷っている場合でも、複数の選択肢を比較すれば、より納得しやすい売却方針を立てられる可能性があります。アイシア法律事務所の無料相談では、少数株式の売却方法、譲渡制限の有無、価格交渉、第三者買い手候補の可能性を整理できます。
坂尾陽弁護士
少数株式の売却に関連する詳しい論点は、次の記事でも解説しています。
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