ROFR・ROFO条項は、非上場株式を第三者へ売却する前に、既存株主や発行会社へ優先的な購入機会又は交渉機会を与える契約条項です。ROFRは先買権・優先買取権、ROFOは優先交渉権・ファーストオファーなどと呼ばれます。
少数株主が買主候補を見つけても、投資契約や株主間契約にROFR・ROFOがある場合、直ちに株式譲渡契約を締結して決済できるとは限りません。第三者の条件を権利者へ通知する、先に権利者へ売却条件を提示する、一定期間回答を待つ、条件が変われば再提示するといった手続が必要になることがあります。
ROFRとROFOは似ていますが、第三者との交渉を先に行うか、既存株主への提示を先に行うかが大きく異なります。もっとも、契約書によって用語の使い方や手続は異なるため、英語名だけで判断せず、発動条件、通知事項、回答期限、第三者売却可能期間を条文に沿って確認することが重要です。
この記事では、ROFR・ROFO条項がある非上場会社の少数株主が株式を売却する場面を前提に、先買権・優先交渉権の違い、売却手続、通知内容、同一条件、再提示、複数権利者、違反時の対応を解説します。
- ROFRでは、原則として第三者との売却条件を固めた後、権利者へ同一条件で購入する機会を与えます。
- ROFOでは、原則として第三者へ売り込む前に、権利者へ最初の提案・交渉機会を与えます。
- 契約当事者、対象株式、除外譲渡、通知方法、回答期限、第三者売却可能期間を最初に確認します。
- 価格だけでなく、支払時期、現金以外の対価、表明保証、補償、条件付き対価まで比較します。
- 無通知売却や有利な条件への変更は、差止め・履行請求・損害賠償等の争いにつながる可能性があります。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~ 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
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ROFR・ROFO条項とは
ROFR・ROFO条項は、株式を売却しようとする株主と、優先権を持つ既存株主・発行会社などとの間の契約上のルールです。少数株主が法律上当然に負う手続ではなく、投資契約、株主間契約、株式引受契約、加入契約、サイドレターなどに根拠がある場合に問題となります。
まずは、株主間契約の当事者・効力・売却条項を確認し、自分が売却制限を負う当事者か、相手方が現在も権利者かを確かめる必要があります。
ROFRは第三者条件を基準にする先買権
ROFRはRight of First Refusalの略で、一般に、売主が第三者の買主候補と株式売却の条件を合意又は具体化した後、その条件を既存株主等へ通知し、同一又は契約所定の条件で優先的に買い受ける機会を与える仕組みです。日本語では先買権、優先買取権、優先購入権などと呼ばれます。
権利者が所定期間内にROFRを行使すれば、売主は第三者ではなく権利者へ売却することになります。権利者が行使しなければ、売主は通知した条件の範囲内で第三者へ売却できるのが典型です。名称に「Refusal」が含まれますが、第三者売却を無期限に拒否できる権利ではなく、通知された条件で自ら購入するかを選ぶ権利として設計されることが一般的です。
ROFOは第三者交渉前のファーストオファー
ROFOはRight of First Offerの略で、一般に、売主が第三者へ株式を売り込む前に、既存株主等へ最初に売却の提案をし、優先的に交渉する機会を与える仕組みです。優先交渉権、優先提案権、ファーストオファーなどと呼ばれます。
ROFOでは、権利者が提示条件を受け入れるとは限らず、売主と権利者の交渉が合意に至らないこともあります。交渉が不成立となった場合に第三者へ売却できるか、第三者へ提示できる最低価格や条件、第三者売却可能期間、再提示の要否は契約条項で決まります。
条項名ではなく実際の発動順序を確認する
実務では、同じ「先買権」「優先交渉権」という名称でも、第三者の具体的なオファーを必要とする条項、売主の希望条件だけで足りる条項、先に既存株主へ照会した後で第三者条件を再提示する二段階の条項などがあります。ROFRと書かれていてもROFOに近い場合や、その逆もあり得ます。
ROFR・ROFOという略称だけで手続を決めないでください。「いつ発動するか」「誰へ何を通知するか」「回答がなければどうなるか」「第三者へどの条件でいつまで売れるか」を条文から抜き出す必要があります。
タグアロング・ドラッグアロング・譲渡承認との違い
| 仕組み | 少数株主の立場 | 主な確認点 |
|---|---|---|
| ROFR | 第三者条件と同一又は所定条件で権利者へ優先購入の機会を与える | 第三者オファー、通知、同一条件、行使期限、第三者売却期間 |
| ROFO | 第三者交渉前に権利者へ最初の提案・交渉機会を与える | 初回提示、優先交渉期間、独占性、第三者への最低条件、再提示 |
| タグアロング | 大株主等の売却へ任意に参加する権利 | 対象譲渡、参加期限、売却株数、同一条件 |
| ドラッグアロング | 一定要件で株式売却を求められる義務 | 発動主体、賛成割合、価格、補償、決済 |
| 定款上の譲渡制限 | 会社法・定款に基づき会社の承認を得る手続 | 承認機関、申請、承認・不承認、指定買取人等 |
タグアロングは少数株主が共同売却へ参加する権利、ドラッグアロングは少数株主が強制売却を求められる場合の条項です。ROFR・ROFOとは目的と手続が異なりますが、同じ売却に複数の条項が重なることがあります。
売却を始める前に契約書と期限を整理する
ROFR・ROFO付きの少数株式を売却する場合、買主候補へ価格を提示する前に、最新の契約関係をそろえることが安全です。最初の投資契約だけではなく、後の資金調達で条項が変更されていたり、新しい株主間契約が旧契約に優先すると定められていたりすることがあります。
- 投資契約・株式引受契約:出資時の譲渡制限、先買権、通知条項を確認します。
- 株主間契約・財産分配契約:現在の権利者、売却条項の順序、優先関係を確認します。
- 変更契約・加入契約・サイドレター:権利者の追加・削除、期間、除外譲渡、個別免除を確認します。
- 定款・登記事項・株主名簿:譲渡制限、株式の種類、現在の株主・持株数を確認します。
- 株券・新株予約権・種類株式の資料:売却対象と決済に必要な書類を確認します。
- 買主候補の提案書・意向表明書:価格だけでなく、条件付き対価や付随契約を確認します。
投資契約書・出資契約書の確認ポイントも参照し、契約名ではなく実際の条項と最新版を横断して確認してください。
誰の売却が対象で誰が権利者かを確認する
ROFR・ROFOは、すべての株主の売却に適用されるとは限りません。創業株主による売却だけを対象にする条項、投資家同士の売却にも適用する条項、一定割合以上の譲渡に限る条項、特定種類の株式だけを対象にする条項があります。
また、自分が契約当事者であっても、売却時点で権利者が持株比率要件を満たしていない、契約期間が終了している、上場・組織再編などの終了事由が発生している場合があります。売主、権利者、発行会社、買主候補の誰がどの契約に拘束されるかを図にして整理すると、通知先の漏れを防ぎやすくなります。
除外譲渡・許容譲渡を確認する
契約によっては、一定の譲渡をROFR・ROFOの対象外としています。典型例として、一定の関係会社への移転、ファンド内又はファンド満期に伴う移転、相続・事業承継、担保設定、グループ内再編、役職員持株制度に基づく移転などがあります。
もっとも、除外譲渡でも、譲受人の加入契約、事前通知、再譲渡時の原状回復、契約上の義務承継が必要なことがあります。「例外だから連絡不要」とは限らないため、例外要件と付随条件を一緒に確認します。
回答期限と第三者売却可能期間を一本の工程表にする
| 時点・期間 | 確認する事項 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 売却検討開始 | 第三者への接触前にROFOが発動するか | 市場調査や価格照会も「交渉」に含まれるか |
| 第三者条件の確定 | ROFR通知に足りる合意・提案か | 意向表明書、基本合意、拘束的オファーのどれが必要か |
| 通知発送 | 宛先、方法、添付資料、到達時点 | 電子メールだけで足りるか、全権利者への到達が必要か |
| 回答期間 | 起算日、暦日・営業日、時刻、延長 | 休日、時差、みなし到達、資料補充時の再起算 |
| 優先交渉期間 | 独占性、交渉義務、情報提供 | 第三者との並行交渉が禁止されるか |
| 第三者売却期間 | 期間内に契約締結又は決済が必要か | 条件変更・期間徒過による再提示の要否 |
契約上の「通知から30日」と「通知受領日の翌日から30営業日」では期限が大きく変わります。起算日、営業日の定義、締切時刻、時差まで日付に落としてください。
ROFR条項がある株式を売却する流れ
ROFRでは、第三者の条件を基準に権利者が購入するかを判断します。ただし、どの程度具体的な第三者提案が必要か、権利行使だけで売買契約が成立するかは条項ごとに異なります。一般的な流れは次のとおりです。
- 第三者の買主候補と売却条件を具体化する:株数、価格、支払、決済条件、売主責任を整理します。
- 権利者へ譲渡希望通知を送る:買主情報と全条件を契約所定の方法で通知します。
- 権利者の回答を待つ:行使・不行使、購入株数、資金証明などを確認します。
- 行使された場合は権利者との売却を進める:契約成立時点、最終契約、決済日を確認します。
- 行使されない場合は許された条件・期間内に第三者へ売却する:条件変更時は再提示を検討します。
第三者オファーの拘束力と完成度を確認する
ROFR通知の前提が「第三者からの誠実な申込み」「拘束力あるオファー」「売主が受諾しようとする条件」などと定められている場合、単なる口頭の価格照会や概算評価では足りない可能性があります。他方、最終的な株式譲渡契約の締結後に通知する設計では、第三者との契約にROFR行使を解除条件・前提条件として組み込む必要があります。
第三者との書面には、ROFR手続が完了しなければ取引を実行できないこと、権利者が行使した場合には第三者との取引が終了すること、通知に必要な情報を権利者へ開示できることを反映しておくと、後の紛争を避けやすくなります。
譲渡希望通知は条件全体を開示する
通知では、買主候補の氏名・名称、実質的な支配者、対象株式の種類・数、価格、支払方法、決済日、前提条件、表明保証・補償、条件付き対価、費用負担など、権利者が同じ経済条件で購入するかを判断できる情報を示します。契約が第三者オファーや株式譲渡契約書案の写しを要求している場合は、要約だけで済ませないようにします。
権利行使の内容と有効性を確認する
権利者の回答が「資金調達できれば買う」「価格を再交渉したい」といった条件付きの場合、それが有効なROFR行使かは契約文言によります。行使通知に購入株数、無条件の購入意思、資金証明、保証金、決済可能日などが必要とされていることもあります。
複数の権利者がいる場合や一部だけ行使された場合には、誰が何株を取得するか、残余株式を第三者へ売れるかを確定させます。売主側で勝手に配分せず、按分・追加申込み・全部取得条件を条文どおりに処理します。
行使後の売買成立時点と決済条件を確認する
ROFRの行使通知だけで売買契約が成立する条項もあれば、行使後に別途株式譲渡契約を締結する条項もあります。後者の場合でも、権利者が第三者より有利な条件を新たに要求できるとは限りません。第三者条件を基準にしつつ、権利者固有の法令・社内手続、秘密保持、譲渡承認などをどう調整するか確認します。
不行使後も自由に条件を変えられるわけではない
ROFRが行使されなかった後、売主は通常、通知した第三者へ、通知条件と同一又は権利者に不利でない条件で、一定期間内に限って売却できます。第三者への価格を下げる、支払期限を延ばす、補償を軽くする、買主を変更するなど、第三者に有利な変更をする場合は、再度ROFR手続が必要になる可能性があります。
「ROFRを一度通したから、いつでも誰にでも売れる」とは限りません。第三者売却可能期間、買主の同一性、許容される条件差、再通知条項を決済まで確認してください。
ROFO条項がある株式を売却する流れ
ROFOでは、第三者のオファーを得る前に、権利者へ最初の売却機会を与えることが中心です。ROFRより売主が自分で希望条件を設定しやすい一方、第三者との交渉開始時期や、交渉不成立後の最低条件をめぐって争いになりやすい面があります。
- 売却希望と初回提示条件を整理する:株数、希望価格、支払方法、決済時期などを定めます。
- 権利者へファーストオファー通知を送る:契約所定の情報と提案を提示します。
- 回答・優先交渉期間を運用する:独占交渉か、並行交渉が許されるかを確認します。
- 合意できれば権利者へ売却する:最終条件と決済手続を確定します。
- 合意できなければ契約所定の範囲で第三者へ売却する:最低価格、期間、再提示を確認します。
第三者へ接触する前にROFOが発動するかを確認する
ROFO条項が「第三者への勧誘又は交渉を開始する前」と定めている場合、買主候補へ具体的な価格を打診する行為、仲介会社へ売却条件を提示する行為、複数候補から入札を募る行為が条項違反となる可能性があります。一般的な市場調査や匿名の価格確認が許されるかも、条文と運用から慎重に判断します。
初回提示には交渉可能な条件を具体的に書く
ROFO通知が抽象的すぎると、権利者が判断できず、手続が有効に開始したか争われるおそれがあります。売却株数、株式の種類、希望価格又は価格算定方法、支払方法、決済時期、必要な承認、付随契約などを示し、どの項目が確定条件でどこが交渉可能かを分けます。
優先交渉期間の独占性と交渉義務を確認する
ROFOは交渉機会を与える条項であり、常に権利者へ売却する義務を意味するわけではありません。ただし、優先交渉期間中の第三者交渉を禁止する独占条項、誠実に交渉する義務、資料提供義務、回答義務が組み合わされていることがあります。
売主は、権利者の提示が希望額に届かないという理由だけで直ちに交渉を打ち切れるとは限りません。他方、合意義務までない条項であれば、売主が合理的な理由で提案を受け入れず、所定期間後に第三者売却へ進める場合もあります。
交渉不成立後の第三者条件を確認する
ROFOでは、権利者との交渉後に第三者へ売却する際、権利者へ提示した条件より第三者に有利な条件で売ることを禁じたり、第三者売却価格の下限を定めたりすることがあります。第三者へより低い価格で売却したい場合は、権利者への再提示が必要になることがあります。
第三者売却可能期間が過ぎた場合や、買主候補・株数・対価の種類が変わった場合も、ROFO手続を最初からやり直す可能性があります。ROFOは外部の確定条件が基準にならないため、どの差が「より有利」又は「重要な変更」に当たるかを契約に沿って整理することが重要です。
「優先交渉権」という言葉は、M&Aの基本合意で特定買主に与える独占交渉権にも使われます。本記事のROFOは、株主間契約等に基づき既存株主へ最初の株式購入機会を与える条項を指します。
ROFR・ROFOの通知に記載すべき事項
通知事項は契約書の列挙に従うことが基本です。もっとも、列挙が簡潔でも、権利者が購入・交渉の判断をするために重要な条件を隠すと、通知の有効性や同一条件が争われることがあります。
| 通知項目 | 具体的な内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 買主候補 | 名称、所在地、代表者、関係会社、実質的な取得者 | 名義人を替えた迂回譲渡や競合への移転かを判断する |
| 対象株式 | 種類、数、割合、付随する権利、株券番号等 | 権利対象と購入株数を特定する |
| 価格 | 総額、1株単価、通貨、価格調整、税の扱い | 表面価格と最終受取額の差を確認する |
| 支払 | 一括・分割、支払日、利息、担保、エスクロー | 回収時期・信用リスクを比較する |
| 条件付き対価 | アーンアウト、買主株式、ロールオーバー、後払い | 現金価格だけでは同一条件を判断できない |
| 売主責任 | 表明保証、補償、責任上限、請求期間 | 経済的負担を含めて条件を比較する |
| 前提条件 | 譲渡承認、許認可、資金調達、第三者同意 | 取引成立可能性と決済時期を判断する |
| 付随契約 | 雇用、役員退任、顧問、競業避止、貸付返済等 | 株式対価以外の利益・負担を把握する |
買主候補との秘密保持と通知義務を両立させる
第三者の買主候補が、自社名、価格、事業計画などの開示を制限することがあります。しかし、ROFR・ROFO条項が具体的な買主情報や提案書の提出を要求している場合、秘密保持を理由に通知事項を省略すると手続が無効又は未開始と主張されるおそれがあります。
買主候補との秘密保持契約に、契約上の優先権手続に必要な範囲で既存株主・会社・専門家へ情報を開示できる例外を設け、権利者にも秘密保持義務を負わせるなど、取引初期から調整します。
通知方法・宛先・到達を証拠化する
契約の通知条項が、書留郵便、国際宅配便、電子メール、指定システムなどを定めている場合、その方法に従います。担当者との日常的なメールやチャットで伝えただけでは、正式な通知と扱われない可能性があります。
- 契約所定の全通知先と最新の住所・メールアドレスを確認する
- 通知本文、添付資料、送信日時、受領記録を一式保存する
- みなし到達の条件と実際の受領日の両方を記録する
- 資料を追加・訂正した場合に回答期間が再起算するか確認する
- 相手方の質問・回答・期限延長の合意を文書化する
権利者の回答も形式と期限を確認する
権利者側の行使通知にも、所定の宛先、方法、期限、購入株数、条件、署名権限などが定められていることがあります。売主としては、期限後又は条件付きの回答を当然に有効とも無効とも決めつけず、契約文言とこれまでの運用を確認して、異議を留保したうえで取扱いを明確にします。
「同一条件」と再提示の要否を判断する
ROFRでいう同一条件、ROFO後の第三者売却条件は、1株当たり価格だけを比べればよいとは限りません。売主が最終的に受ける経済的利益と負担を全体として比較する必要があります。
| 条件 | 第三者条件の例 | 比較・再提示のポイント |
|---|---|---|
| 支払時期 | 即時一括と2年分割 | 名目価格が同じでも回収リスクと現在価値が異なる |
| 対価の種類 | 現金と買主株式 | 換金性、価格変動、譲渡制限、評価方法を確認する |
| アーンアウト | 将来業績に応じて追加支払 | 達成条件、情報権、算定主体、上限を比較する |
| エスクロー | 代金の一部を一定期間留保 | 留保割合、期間、解除条件、請求リスクを比較する |
| 表明保証・補償 | 広い事業保証と権原保証のみ | 責任範囲・上限・期間が価格の実質に影響する |
| 付随利益 | 役員報酬、顧問料、退職金、貸付返済 | 株式対価との関係と合理的な配分を確認する |
| 取引範囲 | 株式単独と事業・貸付債権の一括取得 | 束ねられた資産・負債を分けて比較できるか確認する |
現金以外の対価は評価方法を確認する
第三者が買主株式、社債、暗号資産その他の現金以外の対価を提示した場合、ROFR権者が全く同じ対価を提供できないことがあります。契約に現金相当額への換算方法、第三者評価、当事者協議などが定められているかを確認します。
評価方法がない場合、売主が一方的に高い換算額を設定したり、権利者が一方的に低い価値を主張したりすると争いになりやすいため、評価基準日、価格情報、流動性・譲渡制限、税務影響を示して合意形成を図ります。
付随契約・サイドペイメントを切り分ける
第三者取引で、大株主や役員にだけ雇用継続、退職金、顧問報酬、競業避止対価、貸付金返済などが付与されることがあります。これらが実際の役務・債権に対応する合理的な条件であれば、直ちに株式代金とはいえません。一方、実質的に株式価格の一部を別名目で支払うものであれば、同一条件の判断に影響します。
少数株主が売主である場合も、自己だけに付随する雇用・役員関係の条件と株式対価を混同せず、買主候補との契約書を分け、算定根拠を残しておくことが重要です。
再提示が必要になり得る主な変更
- 価格の引下げ:第三者にとって購入しやすくなり、権利者にも同じ機会を与える必要が生じます。
- 支払条件の緩和:支払期限の延長、保証金の減額、担保の追加などは経済条件を変えます。
- 売主責任の軽減:表明保証・補償の削減は、第三者への条件を有利にすることがあります。
- 買主又は実質取得者の変更:通知対象者と異なる者への売却は再通知の対象になり得ます。
- 株数・種類・取引範囲の変更:一部売却、種類株式の追加、貸付債権との一括譲渡などを確認します。
- 決済期限の徒過:第三者売却可能期間を過ぎれば、同じ条件でも手続のやり直しが必要なことがあります。
第三者売却可能期間を過ぎたら手続をやり直す
ROFR・ROFOの不行使は、通常、その時点の特定条件・特定買主・特定期間に限るものです。第三者との交渉が長引き、契約所定の期間内に締結又は決済できなかった場合、権利者の優先機会が復活し、再度通知・交渉が必要になることがあります。
複数の権利者と売却条項の優先順位を確認する
ROFR・ROFOは、一人の権利者だけを想定しているとは限りません。複数の投資家、創業株主、発行会社が重複して権利を持つ場合、通知先、行使順位、按分、追加申込みを正確に処理しなければなりません。
複数の権利者が行使した場合の配分を確認する
典型的には、各権利者の持株割合に応じて購入可能株数を按分し、他の権利者が行使しなかった分について追加購入を認めます。しかし、優先順位型、全株取得を条件とする型、最低購入単位を定める型もあります。
端数処理、権利行使者間の合意、資金不足、決済不履行が起きた場合の残余株式の扱いも確認します。一部しか買い取られない場合に、残りを第三者へ売れるのか、全部について手続をやり直すのかは条文によります。
同意権・タグアロング・ドラッグアロングとの順序を確認する
| 手続 | 主な役割 | 順序で確認すること |
|---|---|---|
| 譲渡禁止・事前同意 | 特定株主・会社の同意がない売却を制限する | 同意前にROFO・ROFRを始められるか、同意が例外条件か |
| ROFO | 第三者交渉前に最初の提案機会を与える | 市場接触前に必要か、交渉不成立後の条件 |
| ROFR | 第三者条件で優先購入の機会を与える | 第三者条件の完成度、通知、行使、残余株式 |
| タグアロング | 他の株主が同じ第三者売却へ参加する | ROFR不行使後に発動するか、買主の取得上限 |
| ドラッグアロング | 一定要件で全株主等に売却を求める | 他の譲渡制限を排除・優先する条項があるか |
| 会社の譲渡承認 | 定款上の譲渡制限株式について会社が承認する | 契約手続の前後、承認機関、決済条件 |
同じ契約内に優先関係が明記されている場合はそれに従います。明記がなければ、各条項の目的と文言、過去の運用を踏まえて順序を整理し、全当事者へ同じ工程表を共有することが有効です。
発行会社が買主になる場合は自己株式取得手続を確認する
ROFRの権利者に発行会社が含まれ、会社自身が株式を買い取る場合、契約上の権利行使だけで完了するとは限りません。自己株式取得に関する会社法上の手続、分配可能額、機関決議、価格・条件、資金繰りなどを別途確認する必要があります。
契約に基づく会社・大株主への売却や買取りを検討する場合は、投資契約・株主間契約に基づく株式買取請求の要件・相手方・価格も参照してください。
定款上の譲渡承認は契約手続と別に行う
ROFR・ROFOを適切に終えても、対象株式に定款上の譲渡制限があれば、会社の譲渡承認手続が必要になることがあります。反対に、会社が譲渡を承認しても、ROFR・ROFO違反が当然に解消されるわけではありません。契約上の義務と会社法・定款上の手続を分けて進めます。
第三者売却が可能になった後の契約・決済を確認する
ROFR・ROFO手続が終わっても、株式譲渡はまだ完了していません。第三者との株式譲渡契約、会社の承認、株券、代金支払、株主名簿の名義書換、新株主の契約加入までを一つのクロージング手順にします。
株式譲渡契約に優先権手続の完了を反映する
株式譲渡契約書には、ROFR・ROFO手続が適法に完了したことを前提条件又は表明保証として定めることがあります。売主は、通知書、受領記録、不行使通知、期限経過の証拠を整理し、買主へ説明できるようにします。
他方、優先権手続に解釈の余地があるのに、売主が「一切の違反がない」と広く保証すると、後に権利者から争われた際に買主との責任問題も生じます。確認できた事実と法的評価を分け、開示資料や責任上限を検討します。
譲渡承認・株券・株主名簿を決済条件にする
譲渡制限株式の場合は、定款で定める承認機関と申請方法を確認します。株券発行会社であれば株券の発行・保管・交付状況を確認し、決済後は株主名簿の名義書換を進めます。代金支払と株式・必要書類の引渡しを同時に行えるよう、クロージングチェックリストを作成します。
新株主の加入契約・秘密保持を確認する
株主間契約が、新たな株主を契約当事者として加入させることを売却条件としている場合、買主から加入契約を取得します。加入前にどの情報を開示できるか、既存の秘密保持義務、競業避止、情報提供権なども確認します。
税金・費用を含む手取額で売却判断する
非上場株式の売却では、売却価格から税金、仲介費用、専門家費用、エスクロー、補償留保などを差し引いた実際の手取額を確認します。ROFR権者と第三者で費用負担が異なる場合は、その差も同一条件の判断に影響し得ます。
ROFR・ROFO条項に違反した場合の対応
ROFR・ROFO違反の効果は、契約条項、違反の時点、第三者売却の進行状況、第三者が契約を知っていたかなどにより異なります。契約違反があるからといって、第三者への株式譲渡が当然に無効になるとは限りません。
違反になり得る主な行為
- 権利者へ通知せずに第三者と契約・決済する
- 買主、価格、支払、付随契約など重要な条件を通知から除く
- 回答期限が終わる前に第三者へ売却する
- 不行使後、第三者に通知条件より有利な条件を与える
- 第三者売却可能期間を過ぎてから手続をやり直さず売却する
- 関連会社・名義人・分割取引を使い、実質的に対象譲渡を迂回する
- ROFOの優先交渉期間中に禁止された第三者交渉を進める
決済前は証拠保存・異議通知・権利保全を急ぐ
違反を受けた権利者側では、契約書、変更契約、通知、メール、第三者提案、株主名簿、会議資料などを保存し、どの条項にいつ違反したかを特定します。クロージングが迫る場合は、売主・会社・買主候補へ異議と要求を通知し、決済延期、情報開示、手続のやり直し、権利行使の受入れなどを求めることが考えられます。
仮処分等による差止めが可能かは、契約上の権利の具体性、緊急性、売却後の回復困難性、第三者への影響などから個別に判断されます。申立てを検討する場合は、決済日から逆算して早期に証拠と請求内容を整理する必要があります。
決済後は履行請求・損害賠償等を検討する
第三者への売却後は、契約条項に基づく株式の移転・再譲渡を求められるか、損害賠償・違約金・解除等を求められるかを検討します。もっとも、第三者が契約当事者でない場合や既に株式を取得している場合には、売主に対する契約上の請求と、会社法上の株主関係を分けて考える必要があります。
損害賠償では、ROFRを適切に行使していれば得られた利益、購入機会を失ったことによる損害、調査・交渉費用などが問題になり得ますが、違反、損害、因果関係、金額の立証が必要です。抽象的に「株式を買えなかった」だけで請求額が決まるわけではありません。
契約違反後の通知、履行請求、仮処分、解除、損害賠償については、投資契約・株主間契約に違反された場合の対応も確認してください。
売主側も、違反を指摘された後に資料を削除したり、条件を遡って作り直したりしないでください。事実経過と原資料を保存し、決済を進めるか一度止めるかを早期に判断することが重要です。
弁護士に相談する前に整理すべき資料
ROFR・ROFOの相談では、条項だけでなく、どの段階まで第三者との交渉が進んでいるか、次の期限がいつかによって対応が変わります。相談前に次の資料をそろえると、手続の有効性と売却可能時期を判断しやすくなります。
- 投資契約、株主間契約、株式引受契約、変更契約、加入契約、サイドレター
- 定款、登記事項証明書、株主名簿、種類株式の内容、株券関係資料
- 第三者買主の意向表明書、基本合意書、株式譲渡契約書案、価格算定資料
- ROFR・ROFO通知、添付資料、送受信記録、権利者からの回答・質問
- 買主候補・権利者・会社とのメール、チャット、会議議事録、録音
- 売却検討開始から現在までの時系列と、各契約上の期限一覧
- 希望する解決内容と譲れない条件(価格、決済時期、秘密保持、責任上限等)
すでに回答期限・決済日が近い場合は、資料が完全にそろうのを待たず、現時点の契約書と日程を示して相談し、追加資料を後から補う方法も検討してください。
よくある質問
ROFR・ROFO条項がなければ少数株式を自由に売却できますか
ROFR・ROFOがなくても、株主間契約上の譲渡禁止・事前同意、定款上の譲渡制限、タグアロング、ドラッグアロング、担保権、法令上の制約などを確認する必要があります。また、非上場株式は買主が見つかりにくく、価格・情報開示・決済条件の交渉も必要です。
「優先交渉権」と書かれていれば必ずROFOですか
必ずしもそうではありません。既存株主へ最初の購入提案をするROFOを指す場合もあれば、M&Aの基本合意で特定の買主に与える独占交渉権を指す場合もあります。対象資産、権利者、発動時点、第三者交渉の可否を条文で確認してください。
ROFR通知には第三者との最終契約が必要ですか
契約によります。拘束力ある第三者オファー、誠実な申込み、売主が受諾予定の条件、契約書案など、必要な完成度は条項ごとに異なります。最終契約を先に締結する場合は、ROFR行使を解除条件又は前提条件として扱うことも検討します。
第三者買主の名前を秘密にしたままROFR通知できますか
契約が買主の氏名・名称や提案書の開示を求めている場合、匿名通知では不十分となる可能性があります。買主との秘密保持契約に必要開示の例外を設け、権利者にも秘密保持を求めるなどの調整が必要です。
権利者がROFRを行使しなければ第三者への価格を下げてもよいですか
自由に下げられるとは限りません。第三者へより有利な条件で売却する場合は、権利者へその条件を再提示する条項が一般的です。価格だけでなく、支払、補償、付随利益などを含めて変更を確認します。
親族・関係会社への譲渡ならROFR・ROFOは不要ですか
除外譲渡として明記され、要件を満たす場合は不要となることがあります。しかし、事前通知、譲受人の加入、再譲渡制限などの条件が付く場合があります。単に関係が近いというだけで例外になるとは限りません。
複数の権利者が全員ROFRを行使したら誰に売りますか
契約の配分条項に従います。持株割合による按分、追加申込み、優先順位、全部取得条件などが考えられます。端数や資金不足、決済不履行時の残余株式も確認してください。
第三者売却可能期間内に契約を締結すれば、決済は後でもよいですか
条項が「譲渡」「契約締結」「クロージング」のどの時点を期限としているかによります。契約締結だけで足りると決めつけず、決済日、前提条件、延長合意を確認してください。
会社が株式譲渡を承認すればROFR・ROFO違反は問題になりませんか
会社の譲渡承認と契約上のROFR・ROFOは別の問題です。会社法・定款上の承認を得ても、契約当事者に対する債務不履行責任が残る可能性があります。反対に、契約手続を終えても会社の承認が必要な場合があります。
ROFR・ROFO違反の売却は必ず無効になりますか
必ず無効になるとは限りません。契約当事者間の効力、第三者の地位、定款上の譲渡制限、株主名簿、救済条項などを分けて判断します。決済前なら差止め等を検討できる場合もあるため、売却を知った時点で早めに対応してください。
まとめ
ROFR・ROFO条項がある少数株式を売却するときは、英語の略称を理解するだけでなく、契約書に定められた順序を売却日程へ落とし込むことが重要です。
- ROFRは第三者条件を基準にする先買権、ROFOは第三者交渉前の優先提案・交渉機会です。
- 契約当事者、対象株式、除外譲渡、通知先、回答期限、第三者売却可能期間を確認します。
- 通知では価格だけでなく、支払、対価、表明保証、補償、付随契約まで開示・比較します。
- 条件変更、買主変更、期間徒過があれば、再提示・手続やり直しの要否を確認します。
- 複数権利者、タグ・ドラッグ、会社の譲渡承認、自己株式取得との順序を整理します。
- 違反を指摘された場合又は決済が迫る場合は、資料を保存し、早期に権利保全を検討します。
売主としては、買主候補との交渉を進める前に、どの時点でROFO又はROFRが発動するかを確認してください。権利者としては、通知を受けたら購入判断だけでなく、通知の完全性、期限、資金準備、条件変更の監視を同時に進めることが大切です。
坂尾陽弁護士
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