取締役を解任された場合でも、解任そのものが直ちに無効になるとは限りません。会社法上、取締役は株主総会の決議によっていつでも解任され得ます。
しかし、正当な理由がないのに任期途中で解任された場合には、会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求できる可能性があります。特に、少数株主兼取締役が、多数派株主や支配株主との対立をきっかけに経営から排除された場合は、解任理由、任期、報酬、会社側の説明資料を早期に整理することが重要です。
この記事では、取締役の解任と損害賠償請求について、会社法339条2項の考え方、正当な理由の判断、不当解任と評価されやすいケース、損害額の計算、裁判例、証拠収集、交渉・訴訟の進め方を、少数株主側の視点で解説します。
- 取締役は株主総会決議で解任され得ますが、正当な理由がない場合は損害賠償請求が問題になります。
- 請求の中心は、残任期間の役員報酬、賞与、退職慰労金の支給可能性などです。
- 多数派との不仲だけでなく、解任理由が客観的・合理的な事情といえるかを資料で確認する必要があります。
- 少数株主兼取締役の場合、損害賠償請求と、株主としての資料請求・株式保有方針は分けて整理します。
坂尾陽弁護士
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~ 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
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取締役を解任されたときにまず押さえるべきこと
取締役を解任されたときは、感情的に反論する前に、まず法的な位置づけを分けて確認する必要があります。特に、少数株主兼取締役の場合は、取締役としての地位、株主としての地位、会社との報酬関係、株式の扱いが混ざりやすいためです。
最初に確認すべきポイントは、次のとおりです。
- 本当に取締役を解任されたのか:株主総会決議による取締役解任なのか、取締役会による代表取締役の解職なのか、任期満了による不再任なのかを確認します。
- 任期がいつまでだったか:定款、選任決議、登記、株主総会議事録から、残任期間を確認します。
- 報酬がどのように決まっていたか:月額報酬、賞与、役員退職慰労金、報酬決議、報酬規程を確認します。
- 会社が示す解任理由は何か:職務懈怠、経営能力不足、法令違反、信頼関係破壊など、会社側の主張を特定します。
- 株主としての権利は残っているか:取締役を解任されても、保有株式自体は当然に失われるわけではありません。
取締役の地位を失った場合でも、株主としての地位は別です。退任・解任をきっかけに株式の売渡しや持株会退会を求められている場合は、損害賠償請求とは別に、取締役・従業員株主が退職時に株式買取を求められた場合の注意点も確認してください。
取締役会で代表取締役を解職されただけで、取締役の地位は残っている場合があります。この場合、会社法339条2項の「取締役解任」と同じに扱えるとは限りません。株主総会決議、登記、議事録を確認することが重要です。
取締役解任で損害賠償請求できる場合
会社法339条1項は、役員及び会計監査人を株主総会の決議によっていつでも解任できると定めています。したがって、取締役は「解任理由が不当だから解任自体が当然に無効」と主張できるわけではありません。
一方で、同条2項は、解任された者が、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対して、解任によって生じた損害の賠償を請求できると定めています。
つまり、実務上は、次のように整理します。
| 場面 | 法的な考え方 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 株主総会で取締役を解任された | 解任自体は可能。ただし正当な理由がなければ損害賠償請求を検討します。 | 会社法339条2項に基づき、残任期間報酬等の損害を整理します。 |
| 代表取締役を解職されたが取締役には残っている | 代表権・役職の問題であり、直ちに取締役解任とは限りません。 | 報酬減額、職務権限、委任契約、社内規程を確認します。 |
| 任期途中で定款変更・不再任により外された | 形式上は任期満了・不再任でも、実質的に解任と同視できるかが問題になることがあります。 | 任期短縮の目的、株主構成、議事録、再任拒否の理由を確認します。 |
| 退職・退任と同時に株式売渡しを求められた | 取締役解任損害賠償とは別に、株主間契約・持株会規約・譲渡制限の問題になります。 | 株式の売却義務の有無、価格、手続を分けて検討します。 |
損害賠償請求の相手方は、原則として会社です。多数派株主や代表者個人に直接請求できるかは、別途、不法行為、会社法上の責任、株主間契約違反などの構成が必要になります。
会社法339条2項の「正当な理由」とは
取締役解任の損害賠償請求で最も重要なのは、解任について「正当な理由」があるかどうかです。正当な理由があれば、解任された取締役は会社に損害賠償請求できない方向になります。
正当な理由は、単に多数派株主が「気に入らない」「信頼できない」と感じたというだけでは足りません。一般には、取締役として職務を執行させることができないと判断することもやむを得ない、客観的・合理的な事情があるかが問題になります。
正当な理由になりやすい事情
正当な理由が認められやすいのは、取締役としての職務遂行に具体的な支障がある場合です。
- 法令・定款違反:粉飾、不正経理、横領、特別背任、利益相反取引、無断競業など。
- 重大な職務懈怠:重要業務の放置、決算・資金繰りへの重大な支障、重要資料の不提出など。
- 会社損害を生じさせる行為:会社資金の私的使用、取引先との不正、会社財産の流出など。
- 職務遂行不能:心身の故障により取締役としての職務遂行が客観的に困難な場合など。
正当な理由になりにくい事情
一方で、次のような事情だけでは、正当な理由として不十分と評価される可能性があります。
- 多数派株主との意見対立:経営方針や株式売却方針で対立しただけの場合。
- 親族間・株主間の不仲:感情的な対立があるだけで、職務執行上の支障が具体化していない場合。
- 代表者の問題を指摘したこと:会社の利益のために監視・是正を求めた行動である場合。
- 抽象的な能力不足:具体的な業務上の失敗や損害を示せない場合。
会社は、解任後に、職務懈怠、能力不足、信頼関係破壊、会社損害などを主張してくることがあります。少数株主兼取締役側では、それが後付けの理由なのか、客観的資料に基づく理由なのかを見分ける必要があります。
少数株主兼取締役の不当解任で問題になりやすいケース
少数株主兼取締役の解任では、単なる役員交代ではなく、支配株主・多数派株主が少数株主を経営から排除する目的で解任するケースがあります。このような場合、会社法339条2項の損害賠償請求を検討する余地があります。
典型例は、次のようなケースです。
| ケース | 問題になる点 | 確認すべき資料 |
|---|---|---|
| 会社の不透明な支出を指摘したら解任された | 監視・是正活動を理由にした排除か、正当な理由があるか | 指摘内容、メール、会議資料、支出資料、解任理由書 |
| 株式売却や買取価格で対立した後に解任された | 株主間紛争を理由に経営から外しただけではないか | 交渉経過、価格提示資料、株主間契約、議事録 |
| 親族会社で兄弟・親族間の対立から外された | 感情的対立と職務遂行上の支障を分ける必要 | 役割分担、勤務実態、会社側の具体的主張、業績資料 |
| 任期途中で定款を変え、不再任にされた | 形式上の任期満了でも実質的な解任といえるか | 定款変更議案、株主総会議事録、任期、再任拒否の理由 |
| 退任を迫られ、拒否したら解任された | 任意退任交渉と解任理由の関係 | 退任条件案、合意書案、録音、メール、報酬資料 |
ただし、少数株主側であることだけで損害賠償請求が認められるわけではありません。裁判では、解任された側の職務内容、会社側の解任理由、解任までの経緯、残任期間、報酬額、会社に生じた具体的支障が総合的に見られます。
請求できる損害の範囲
取締役解任の損害賠償で中心になるのは、解任されなければ残りの任期中に得られたであろう利益です。典型的には、残任期間の役員報酬が問題になります。
残任期間の役員報酬
最も基本的な損害は、解任時点から任期満了までの役員報酬相当額です。たとえば、月額報酬が80万円で残任期間が12か月であれば、単純計算では960万円が出発点になります。
もっとも、常に残任期間全額が認められるとは限りません。長期任期の会社では、事案によって、損害算定期間が一定期間に限定されることがあります。特に非公開会社では定款で取締役任期を最長10年まで伸ばしている場合があるため、任期の長さと損害額の相当性が問題になります。
賞与・役員退職慰労金
役員賞与や退職慰労金は、支給される高度の蓋然性があるか、株主総会決議・規程・慣行・支給基準があるかによって判断が分かれます。
- 賞与:毎年の支給実績、算定基準、役員としての地位に基づく支給といえるかが問題になります。
- 退職慰労金:退職慰労金規程、株主総会決議、支給慣行、支給議案が出される見込みが重要です。
- 未払報酬・立替金:解任とは別に、既に発生している未払報酬、立替金、経費精算を請求できる場合があります。
- 株式価値の低下:取締役解任損害賠償とは別問題になることが多く、株主としての損害構成を分けて検討します。
損害額を検討するときは、報酬月額、残任期間、過去の賞与実績、退職慰労金規程、株主総会決議の有無を表にして整理すると、交渉や訴訟の見通しを立てやすくなります。
裁判例から見る正当理由と損害額の判断
取締役解任損害賠償では、裁判例の結論だけでなく、どのような事実から正当理由が否定又は肯定され、どのように損害額が算定されたかを見ることが重要です。
| 裁判例 | 事案の特徴 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 東京地裁令和6年5月29日判決 | 任期10年から1年への定款変更と不再任により、取締役が任期途中で地位を失った事案です。 | 形式上は不再任でも、実質的に任期途中で取締役地位を失わせたものとして、会社法339条2項の類推適用が問題になり、原告らの損害が認められました。 |
| 東京地裁令和5年12月22日判決 | 親族会社内で取締役兼代表取締役が解任され、長期の残任期間報酬が争われた事案です。 | 会社側の脅迫的行為、入札妨害、背任行為等の主張は、正当理由を基礎付ける客観的・合理的事情とは認められず、月額報酬を基礎に損害が認められました。 |
| 東京地裁令和4年1月14日判決 | 代表取締役の解任に向けた活動を理由に、取締役が解任された事案です。 | 代表取締役の業務執行を監視・是正しようとする活動は、著しく不当な態様とはいえないとして、正当理由が否定されました。残任期12か月分の役員報酬相当額が認められました。 |
| 東京地裁平成25年11月26日判決 | 解任時には会社が把握していなかった事情が、正当理由として問題になった事案です。 | 正当理由の根拠となる事情は、解任時点で客観的に存在していれば足りるとされることがあります。会社側の後発的な主張にも注意が必要です。 |
| 大阪高裁昭和56年1月30日判決 | 旧商法下の取締役不当解任で、損害範囲が問題になった事案です。 | 残任期間中と任期満了時に得られたであろう利益が損害とされ、役員報酬と賞与が認められる一方、退職金は否定されました。 |
| 東京地裁平成20年7月28日判決 | 取締役解任に伴う報酬相当損害と、退職慰労金の扱いが争われた事案です。 | 正当理由なしとして任期満了までの報酬相当額が認められ、退職慰労金支給議案を株主総会に提案しなかった点についても損害が認められました。 |
これらの裁判例から分かるのは、少数株主兼取締役側が勝てるかどうかは、「不仲だったか」ではなく、会社側の解任理由が客観的資料で裏付けられるか、解任された側の残任期間と報酬が資料で立証できるかに左右されるということです。
損害賠償請求前に集めるべき証拠
取締役解任の損害賠償請求では、証拠整理が非常に重要です。会社側が解任理由を後から追加・変更してくることもあるため、解任直後から資料を保存しておく必要があります。
| 資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 定款 | 取締役の任期、取締役会の有無、株式譲渡制限、報酬・退職慰労金の規定を確認します。 |
| 選任時の株主総会議事録 | いつ選任され、任期がいつまでかを確認します。 |
| 解任時の招集通知・議案・議事録 | 解任決議の有無、解任理由、手続の経過を確認します。 |
| 報酬決定資料 | 月額報酬、賞与、役員退職慰労金、報酬規程、株主総会決議を確認します。 |
| 会社側の解任理由資料 | 解任通知、説明書、メール、議事録、社内資料から会社側の主張を特定します。 |
| 職務実績資料 | 担当業務、契約、営業、管理、会議出席、会社への貢献を示します。 |
| 反論資料 | 職務懈怠や不正を否定するメール、報告書、録音、第三者資料を整理します。 |
| 株式関係資料 | 株主名簿、株主間契約、持株会規約、買取請求の有無を確認します。 |
会社資料を任意に取得できない場合でも、株主として閲覧請求できる資料があります。会計資料や帳簿を確認したい場合は、会計帳簿閲覧請求とは|少数株主が株式売却・株価評価の資料を集める方法も参考になります。
解任前後の面談、退任強要、株式売渡し要求、解任理由の説明は、後日の重要な証拠になることがあります。ただし、録音や資料取得の方法には法的リスクがあるため、違法・不当な方法で証拠を集めないよう注意してください。
会社側の反論と対応方針
会社に損害賠償請求をすると、会社側は「正当な理由があった」と反論してくるのが通常です。少数株主兼取締役側では、反論の種類ごとに、どの資料で崩すかを考える必要があります。
| 会社側の反論 | 少数株主側の確認ポイント |
|---|---|
| 職務懈怠があった | 担当業務、業務量、報告内容、会社側からの指示、会議出席状況を確認します。 |
| 経営能力が不足していた | 具体的な失敗、会社損害、改善指導の有無、業績への影響を確認します。 |
| 会社に損害を与えた | 損害額、因果関係、取締役会の承認、他役員の関与を確認します。 |
| 信頼関係が破壊された | 単なる不仲なのか、職務遂行不能といえる具体的事情があるのかを分けます。 |
| 競業・情報持ち出しがあった | 競業避止義務、秘密保持義務、実際の持ち出し、会社損害の有無を確認します。 |
| 株主間紛争が会社運営に支障を与えた | 紛争の原因、会社運営への具体的支障、解任以外の対応可能性を確認します。 |
反論対応で重要なのは、会社側の主張にすぐ感情的に反発するのではなく、会社が主張する事実を一つずつ分解することです。「いつ」「誰が」「何をした」「会社にどの損害が出た」といえるのかを確認し、事実と評価を分けて反論を組み立てます。
交渉・内容証明・訴訟の進め方
取締役解任の損害賠償請求は、いきなり訴訟を起こす前に、資料収集、請求額の仮計算、会社側への通知、交渉を行うことが多いです。ただし、会社側が資料を隠す、時効が近い、株式売渡しを強く迫っているなどの場合は、早めに法的手続を検討する必要があります。
基本的な流れは、次のとおりです。
- 解任の事実と手続を確認する:株主総会決議、議事録、登記、任期を確認します。
- 損害額を仮計算する:月額報酬、残任期間、賞与、退職慰労金の可能性を整理します。
- 会社側の解任理由を特定する:会社の書面、メール、議事録、口頭説明を整理します。
- 内容証明又は通知書を送る:正当理由がないこと、請求額、支払期限、資料開示を明示します。
- 交渉・和解を検討する:支払時期、金額、守秘、株式の扱い、役職・退職条件を分けて交渉します。
- 訴訟提起を検討する:交渉で解決しない場合、証拠と請求額を整理して訴訟を検討します。
時効については、会社法339条2項の法的性質や民法改正の適用関係、いつ権利を行使できる状態になったかによって検討が必要です。「まだ大丈夫」と自己判断せず、解任後は早めに請求方針を決めることが重要です。
取締役解任損害賠償は、会社との交渉だけでなく、多数派株主との株主間紛争、退職条件、株式の処理、秘密保持、競業避止などと一体で交渉されることがあります。ただし、請求権ごとに法的根拠が異なるため、論点を混ぜすぎないことが大切です。
株主としての対応も分けて検討する
少数株主兼取締役は、取締役を解任されても、株式を保有している限り株主です。そのため、損害賠償請求と並行して、株主として会社資料を確認する、株主総会で質問する、株式を保有し続けるか売却するかを検討する場面があります。
もっとも、株式買取交渉は必ずしも前提ではありません。まずは不当解任・損害賠償請求を中心に整理し、そのうえで、今後も会社に関与するのか、株式を持ち続けるのか、売却を検討するのかを分けて考えるのが通常です。
任意の株式買取交渉を検討する場合は、少数株主が会社・大株主に株式を買い取ってもらう方法を、売却価格や買取価格の考え方を確認したい場合は、非上場株式の売却価格・買取価格はいくらかを参照してください。
また、自分が解任された側ではなく、少数株主として問題のある取締役を辞めさせたい場合は、制度が異なります。裁判で役員解任を求める制度については、取締役解任の訴えとは|少数株主が役員解任を求める要件・手続で解説しています。
弁護士に相談すべきタイミング
取締役解任の損害賠償請求は、解任直後の資料保存と初動が重要です。特に、次のような場合は、早めに弁護士へ相談することを検討してください。
- 任期途中で突然解任された場合:残任期間報酬を早期に計算する必要があります。
- 解任理由があいまいな場合:会社側に理由の特定と資料開示を求める必要があります。
- 不正や職務懈怠を一方的に主張されている場合:反論資料を失わないうちに整理する必要があります。
- 株式売渡しや安値買取も求められている場合:損害賠償請求と株式処理を分けて交渉する必要があります。
- 内容証明や訴訟を検討している場合:請求額、証拠、時効、和解条件を整理する必要があります。
相談時には、定款、登記簿、株主総会議事録、解任通知、報酬資料、解任理由に関するメール、報酬支払履歴、株主間契約、持株会規約、会社とのやり取りを可能な範囲で持参してください。資料が不足していても、どの資料をどの手続で取得すべきかを相談できます。
よくある質問
取締役は理由なく解任されても仕方ないのですか?
取締役は株主総会決議によっていつでも解任され得ます。ただし、正当な理由がない場合には、会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求できます。解任自体の可否と、損害賠償請求の可否を分けて考える必要があります。
正当な理由がない不当解任では、いくら請求できますか?
中心になるのは、解任されなければ残りの任期中に得られたであろう役員報酬です。月額報酬、残任期間、賞与の支給可能性、退職慰労金規程、長期任期の相当性などを踏まえて計算します。一般的に正当な理由がないと判断されれば高額な賠償請求が認められる可能性が高いので早めに弁護士に相談することをおすすめします。
多数派株主との不仲は正当な理由になりますか?
単なる不仲や経営方針の違いだけでは、正当な理由として不十分なことがあります。ただし、その対立によって会社運営に具体的な支障が出ていた、会社に損害を与える行為があった、重要業務を妨害したなどの事情がある場合は、会社側の反論として問題になります。
解任された後も株主でいられますか?
原則として、取締役を解任されても株主の地位は当然には失われません。ただし、株主間契約、持株会規約、譲渡制限株式の手続、退職・退任時の売渡し条項がある場合は、株式の扱いを別途確認する必要があります。
会社から株式も買い取ると言われた場合、損害賠償請求と一緒に交渉できますか?
交渉上は一体で話し合うことがありますが、法的には別の問題です。取締役解任損害賠償は、解任に正当な理由がない場合の会社に対する請求です。株式買取は、株主間契約、任意交渉、譲渡制限株式の価格などの問題になります。両方を混同せず、請求額と交渉条件を分けて整理しましょう。
時効はありますか?
損害賠償請求権には時効の問題があります。会社法339条2項の請求についても、いつから時効が進むか、民法改正の適用関係、法的構成によって検討が必要です。解任から時間が経つほど証拠も散逸しやすいため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
少数株主として問題のある取締役を解任したい場合も同様に考えればよいですか?
制度が違います。本記事は、自分が取締役を解任された側の損害賠償請求を扱っています。少数株主として他の取締役の解任を求めたい場合は、株主提案権、株主総会での解任議案、会社法854条の取締役解任の訴えを検討します。
まとめ
取締役を解任された場合、まず確認すべきなのは、取締役解任の事実、任期、報酬、会社側の解任理由です。解任そのものは株主総会決議で行われ得ますが、正当な理由がない場合には、会社に対して損害賠償請求を検討できます。
- 取締役はいつでも株主総会決議で解任され得ますが、正当な理由がない場合は損害賠償請求が問題になります。
- 正当な理由は、職務遂行を委ねられない客観的・合理的事情があるかで判断されます。
- 損害額は、残任期間の役員報酬、賞与、退職慰労金の支給可能性を資料で整理します。
- 少数株主兼取締役の場合、損害賠償請求と株式の扱いを分けて検討することが重要です。
- 解任通知、議事録、報酬資料、メール、録音、株主間契約などを早期に保存しましょう。
少数株主兼取締役の解任は、単なる役員交代ではなく、経営からの排除や株主間紛争の一部として起きることがあります。だからこそ、不当解任・損害賠償請求を中心に、会社側反論、証拠、交渉方針を早期に整理することが重要です。
坂尾陽弁護士
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